研究課題/領域番号 |
15K09032
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構 下志津病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
富澤 稔 独立行政法人国立病院機構 下志津病院(臨床研究部), 臨床研究部, その他 (90334193)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 肝細胞分化 / 解糖系 / 尿素サイクル / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究はヒトinduced pluripotent stem(iPS)細胞から肝細胞への分化誘導法の開発を目的としている。ブドウ糖とアルギニンは細胞の生存に必須である。肝細胞ではブドウ糖とアルギニンはガラクトース、オルニチンからそれぞれ解糖系、尿素サイクルを介して合成される。そこでブドウ糖とアルギニンがなく、ガラクトースとオルニチンを添加した培地にoncostatin M、アポトーシスインヒビター等を添加した培地(hepatocyte differentiation inducer、HDI)でiPS細胞を培養したところ、肝細胞への分化を開始していることが判明した。しかしHDIで培養後7日で細胞は死滅してしまう。そこでiPS細胞をHDIで培養後、市販の15種類の培地に交換後培養を継続し、肝細胞のマーカーであるalpha-feto protein(AFP)、albuminの発現量をリアルタイム定量PCR(qPCR)で解析したところ、Williams’ E medium(WE)が最も両遺伝子の発現が亢進していることが判明した。 転写因子は細胞の分化を調節している。そこでiPS細胞に導入して肝細胞への分化を誘導する転写因子群の解明を試みた。iPS細胞と肝細胞でマイクロアレイ解析を行い、肝細胞で発現の亢進している転写因子群を解析したところ、CCAAT/enhancer binding proteinα(CEBPA)、CCAAT.enhancer binding protein β(CEBPB)、forkhead box protein A1(FOXA1)、FOXA3が明らかになった。この4者の転写因子をiPS細胞に導入し、qPCR、免疫染色によりAFP、albuminの発現を解析したところ、両遺伝子の発現が著明に亢進していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDIに続けてWEにて培養するとiPS細胞は肝細胞への分化を開始することが明らかになった。またiPS細胞にCEBPA、CEBPB、FOXA1、FOXA3を導入すると肝細胞への分化を開始することが明らかになった。 HDIの問題は7日で細胞が死滅するので細胞の収穫が困難な点にあった。今回の検討では培地をWEに交換することで効率的に細胞の収穫が可能になった。HDIの問題を克服したと考えられる。今後培地をHDIからWEに交換後も成熟した肝細胞が得られない可能性はある。今回の検討ではCEBPA、CEBPB、FOXA1、FOXA3を導入すると肝細胞への分化がさらに促進されることが判明した。 したがって現在までの進捗状況は概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、HDIで肝細胞への分化が促進されるメカニズムの解明を試みる方針である。
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