研究課題
本研究の目的はC型肝炎ウイルス(HCV)の複製に関与する宿主因子を見い出し、ウイルス複製のメカニズムを明らかにすることである。プラス鎖RNAウイルスは複製複合体を含む膜小胞(Double membrane vesicle)を形成し、その中で複製複合体を形成し、複製することが知られている。昨年度までにHCV複製に関与する膜小胞(Double membrane vesicle)の形成に重要な役割を果たしているNS4Bと結合する膜タンパクとして小胞輸送(メンブレントラフィック)に関与するERタンパク(COPII)、Golgiタンパク(COPI)を見出した。そこで、本年度はメンブレントラフィックがHCV増殖に関与している可能性を考えて、COPIIおよびCOPI関連タンパクSec23, Sec24, Sec13, Sec31, SAR1, Sec16, RAB1, CSNK1のsiRNAをレプリコン細胞に導入しウイルス複製に与える影響を調べたところ、Sec31 siRNAがウイルス複製を抑制した。SEC31のshRNAレンチウイルスを使って、FVC細胞に感染し、SEC31-KO細胞株を作成した。MOI1でJFH1株を感染させ、ウイルスの感染増殖は強く抑制されたことから、ウイルスの生活環に関わる新規宿主因子としてSec31が見出された。小胞輸送(メンブレントラフィック)は細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしていると考えられ、HCVはその一部を利用することで、その生活環(感染、翻訳、ゲノム合成、粒子形成、放出)を行っているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
HCVの生活環に関与する新規宿主因子Sce31を見出し、概ね順調に進展していると言える。プラス鎖RNAウイルスは複製複合体を含む膜小胞(Double membrane vesicle)を形成し、その中で複製複合体を形成し、複製することが知られている。本研究ではHCVの複製のメカニズム解析を目指ている。HCVNS4BはHCV複製に関与するDouble membrane vesicleの形成に重要な役割を果たしていることが知られているので、NS4Bと結合する膜タンパクを同定し、そのタンパクの複製における役割について解析した。我々はこれまでに、プロテオーム解析およびsiRNAスクリーニングにて、NS4B結合膜タンパクとしてprolactin regulatory element binding protein (PREB)およびSurfeit 4 (SURF4)を見出した。PREBおよびSURF4はそれぞれSec12、ERV29とも呼ばれ、COPII、COPIを介した小胞輸送(メンブレントラフィック)に関与するタンパクとして知られている。このことから小胞輸送がHCV複製複合体を含む膜小胞の形成に重要な役割を果たしている可能性が考えられたので、COPIIおよびCOPI関連タンパクのHCV複製における役割を解析した。そしてHCV増殖に関与するタンパクとしてCOPII関連タンパクのSec31を新たに見出した。
Sec31がHCV生活環のどのステップに関与しているか、ウイルス感染(HCV擬似ウイルスシステム)、ゲノム複製(レプリコンシステム)、その他のステップ(HCVJFH1システム)を用いて縛りこむ。特にゲノム複製については、翻訳とRNA合成の2つのステップに分けて解析を進める。
Sec31KO細胞樹立に時間がかかったため、Sec31KO細胞を用いた実験に使用予定だった研究費に余裕ができた。
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