研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)、ポリオウイルス、サーズコロナウイルス等のプラス鎖RNAウイルスは複製複合体を含む膜小胞(Double membrane vesicle(DMV))を形成し、その中で複製複合体を形成し、複製することが知られている。本研究ではHCVの複製メカニズム解析を目指す。HCVNS4BはHCV複製に関与するDMVの形成に重要な役割を果たしていることが知られているので、NS4Bと結合する膜タンパクを同定し、そのタンパクの複製における役割について解析した。我々はこれまでに、プロテオーム解析およびsiRNAスクリーニングにて、NS4B結合膜タンパクとしてSurfeit 4 (Surf4)を見出した。SURF4はCOPIを介した小胞輸送(メンブレントラフィック)に関与するタンパクとして知られている。Surf4はHCV RNA複製複合体が存在する脂質ラフト膜で検出され、レプリコン細胞内のウイルスdsRNAと共局在した。しかしながら、NS4Bに結合する能力を欠くSurf4d1は、dsRNAと共存しなかった。全長Surf4の発現によりHCV複製が増加し、一方Surf4d1では変化なかったことから、Surf4とNS4Bとの相互作用が複製に重要であることを示した。電顕観察でSurf4 siRNA処理細胞ではDMVの数が大きく減少していた。ポリオウイルスレプリコンをsiRNAで処理すると複製が減少し、デングウイルスでは減少しなかった。ポリオウイルスはDMVを形成し複製することが知られている、一方デングウイルスではDMVを形成しないことから、Surf4はHCV、ポリオウイルス、サーズコロナウイルス等のプラス鎖RNAウイルスに共通の複製コンポーネント形成に作用する可能性が示された。以上の結果から、NS4Bと相互作用することによってSurf4がHCV RNA複製複合体に動員され、DMVの形成を増加させることを示した。
2: おおむね順調に進展している
まず、NS4BとSurf4の結合を免疫沈降法、蛍光染色法、proximity ligation assay(PLA)法で確認した。Huh7細胞にNS4BとSurf4を発現させると、NS4BとSurf4は共沈し、共局在し、2つのタンパクが近接すると発光するPLA法で陽性所見が得られた。Sryf4の各種欠損体を作成したところ、C末欠損Sruf4はNS4Bに結合せず、蛍光染色法で共局在せず、PLA法で陰性であった。Surf4の発現を抑制したHuh7細胞にレプリコンを導入しても複製は少ないが、全長のSurf4を発現させると発現は回復したものの、C末欠損Sruf4では回復が見られなかった。Surf4とNS4Bの結合がHCVの複製に重要なことが示された。さらに、Surf4 siRNA処理細胞の電顕観察ではDMVの数が大きく減少していた。ウイルス複製の減少に伴ってDMVが減少している可能性も考えられるため、Huh7細胞に安定的に大量のNS5Bの複製活性がないNSタンパクを発現する実験系を作成し、この細胞内での観察されるDMVにSurf4 siRNAの与える影響を調べた。HCVの複製に依存しないDMV産生系にSurf4 siRNAを導入したところ、DMVの数が減少したことから、Surf4はDMV形成に重要なことが示された。
ウイルス複製の減少に伴ってDMVが減少している可能性も考えられるため、Huh7細胞に安定的に大量のNS5Bの複製活性がないNSタンパクを発現する実験系を作成し、この細胞内での観察されるDMVにSurf4 siRNAの与える影響を電顕で調べる。さらに、HCVレプリコン細胞からDMVを抽出し、その性質について解析を進める。脂質ラフト膜に包まれていることから、界面活性剤不溶性の可能性がある。さらに、HCV複製複合体はこの膜小胞内に包まれているものと考えられることから、RNase耐性、Protease耐性であることが期待される。このような膜の性質について解析を進める。
目的のタンパクのウイルス増殖に与える影響を調べるため、細胞で強制発現を試みたものの 十分な発現量が得られなかった。そこで抗生剤耐性遺伝子で発現細胞を選択するシステムを導入することになり、恒常的に発現する細胞株を得ることができた。安定発現株の取得に時間を要したため、次年度使用額が生じた。ウイルス複製に依存しないDMV産生実験系を作成し、この細胞内での観察されるDMVにSurf4 siRNAの与える影響を電顕で調べる。さらに、HCVレプリコン細胞からDMVを抽出し、その性質について解析を進める。脂質ラフト膜に包まれていることから、界面活性剤不溶性の可能性がある。さらに、HCV複製複合体はこの膜小胞内に包まれているものと考えられることから、RNase耐性、Protease耐性であることが期待される。このような膜の性質について解析を進める。
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PLOS ONE
巻: 12 ページ: 2017
10.1371/journal.pone.0170461