研究課題
直接作用型抗ウイルス薬の登場によりC型慢性肝炎の治療成績は劇的に向上したが、C型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者の肝発癌は依然として高率で、治療成績も十分とはいえない。有効な治療法の開発のためにはHCV肝発癌機構のより詳細な理解が必要である。申請者は、以前、肝臓特異的なマイクロRNAであるマイクロRNA-122(miR-122)の生理機能がHCV感染により抑制されることを見出した。miR-122は抗発癌作用を有することから、miR-122機能抑制機構の解明はHCV肝発癌機序の理解に大きく貢献することが期待される。平成27年度は主に以下の3項目につき解析を行った。1) HCV感染細胞におけるmiR-122標的遺伝子の発現解析:マイクロアレイ解析でmiR-122の標的遺伝子発現が感染細胞において有意に増加していることを見出し、定量RT-PCR法でも確認した。また、miR-122の過剰発現もしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた拮抗処理により、miR-122の標的遺伝子発現がそれぞれ減少、増加することを確認し、miR-122標的遺伝子の発現上昇がHCV感染によるmiR-122の機能不全を介して起きていることを明らかにした。2) miR-122機能を抑制する責任HCVタンパク質の同定:miR-122標的遺伝子発現を全長HCVゲノム複製細胞とHCVサブゲノミックレプリコン細胞間で比較し、ウイルス構造タンパク質がmiR-122機能不全に関与していることを明らかにした。3) miR-122の機能抑制に関与するHCV標的宿主細胞性因子の同定:Loss-of-function及びGain-of-function法を用いて、Argonauteタンパク質がmiR-122機能不全に関与するHCV標的宿主細胞性因子であることを同定した。
2: おおむね順調に進展している
研究はおおむね順調に進展しているが、miR-122機能を抑制する責任HCVタンパク質の同定に関しては、責任タンパク質領域をさらに絞り込む必要があり次年度以降の課題である。
HCVによるmiR-122機能抑制機構の解析をさらに進めて行くとともに、miR-122の機能抑制が肝細胞の性状に及ぼす影響を詳細に解析する。また、in vivoの系での検証のためにヒト肝細胞キメラマウスを用いた検討も予定している。
研究がおおむね順調に進行し、予定していた研究物品の購入を必要最小限にすることが可能であったため。
平成28年度は、miR-122機能を増強もしくは抑制した細胞株の樹立を考えており、関連する研究物品の購入に使用する予定である。
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