研究課題/領域番号 |
15K09035
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
政木 隆博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60535657)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝発癌 / C型肝炎ウイルス / microRNA / miRISC |
研究実績の概要 |
直接作用型抗ウイルス薬の登場によりC型慢性肝炎の治療成績は劇的に向上したが、C型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者の肝発癌は依然として高率で、治療成績も十分とはいえない。有効な治療法の開発のためにはHCV肝発癌機構のより詳細な理解が必要である。申請者は、以前、肝臓特異的なmicroRNAであるmicroRNA-122(miR-122)の生理機能がHCV感染により抑制されることを見出した。miR-122は抗発癌作用を有することから、miR-122機能抑制機構の解明はHCV肝発癌機序の理解に大きく貢献することが期待される。 平成28年度の研究実績概要を以下に記す。 1) miR-122の機能抑制に関与する責任HCV領域・宿主細胞性因子間相互作用の解析:miR-122の標的遺伝子発現を全長HCVゲノム複製細胞とHCVサブゲノミックレプリコン細胞間で比較し、ウイルス構造タンパク質がmiR-122の機能不全に関与することを明らかにした。また、構造タンパク質領域の変異体を用いて、miRNA機能不全に関与する責任HCV領域を同定した。免疫蛍光染色法により、HCV構造タンパク質がmiRNA-induced silencing complex(miRISC)の構成タンパク質と細胞内で共局在することを明らかにした。さらに、全長HCVゲノム複製細胞では、サブゲノミックレプリコン細胞に比べて細胞内のprocessing body数が減少していることを見出した。 2) miR-122機能制御肝細胞の性状解析:合成miR-122の肝癌細胞株への導入により細胞増殖能が低下することを見出した。miR-122阻害剤(アンチセンスオリゴヌクレオチド)の導入は細胞増殖能に有意な影響を与えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進展しているが、miR-122機能制御肝細胞の性状解析に関しては、細胞の遊走・浸潤能、細胞周期、抗癌剤に対する感受性の評価が十分でなく、次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
HCVによるmiR-122機能抑制機構の解析をさらに進めて行くとともに、miR-122の機能制御が肝細胞の性状に及ぼす影響をさらに詳細に解析する。In vivoの系での検証のために、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた検討も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は国際学会に2回参加したが、何れも日本と韓国での開催学会であり、旅費を必要最小限にすることが可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた実験を計画しており、次年度使用額は、マウスや関連する研究物品の購入に使用する予定である。
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