研究課題
直接作用型抗ウイルス薬の登場によりC型慢性肝炎の治療成績は劇的に向上したが、C型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者の肝発癌は依然として高率で、治療成績も十分とはいえない。有効な治療法の開発のためにはHCV肝発癌機構のより詳細な理解が必要である。申請者は、以前、肝臓特異的なmicroRNAであるmicroRNA-122(miR-122)の生理機能がHCV感染により抑制されることを見出した。miR-122は抗発癌作用を有することから、miR-122機能抑制機構の解明はHCV肝発癌機序の理解に大きく貢献することが期待される。平成29年度の研究実績概要を以下に記す。1)miR-122の機能抑制に関与する責任HCV領域の同定:miR-122の標的遺伝子発現を全長HCVゲノム複製細胞とHCVサブゲノミックレプリコン細胞間で比較し、ウイルス構造タンパク質がmiR-122の機能不全に関与することを明らかにした。さらに、構造タンパク質領域の変異体を用いて、miRNA機能不全に関与する責任HCV領域を同定した。2)miR-122の機能抑制に関与するHCV標的宿主細胞性因子の同定:HCVが標的とするmiRNA経路の詳細を明らかにするために、miRNAの成熟化に関与する宿主細胞性因子のノックダウン及び過剰発現実験を行なった。その結果、HCV構造タンパク質がAGOタンパク質を中心としたmiRNA-induced silencing complexを標的とし、その機能を障害することで、miR-122をはじめとする広範囲なmiRNA機能不全を惹起する可能性が示唆された。3)miR-122の機能障害がHCV増殖に及ぼす影響の解析:HCV感染後のmiR-122機能障害により抑制解除され、発現が亢進するmiR-122の標的宿主因子を同定した。同定宿主因子のノックダウンはHCVの増殖を抑制した。
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