研究課題/領域番号 |
15K09036
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
井関 將典 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 室長 (30532353)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自然リンパ球 / ILC2 / 好酸球 / 線維化 / IL-5 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が独自に新しく開発したIL-5レポーターマウスの解析より、肝臓や腎臓などの非リンパ系組織内にも常在することが明らかになった自然免疫系IL-5産生細胞(2型自然免疫系リンパ球様細胞:ILC2)及び好酸球の役割を解明することが目的である。平成27年度には主に以下の研究を行った。 ILC2から産生されるIL-5が肝臓の慢性炎症によって引き起こされる線維化に重要であるかどうかを調べるためにIL-5欠損マウスに四塩化炭素(CCl4)を繰り返し腹腔内投与し肝線維症誘導実験を行った。CCl4を週二回、4週間投与後に肝臓組織の切片を作成し、シリウスレッド染色を行って組織内のコラーゲンを染色し線維化の程度を判定した。その結果、IL-5欠損マウスと野生型マウスの間に肝線維化の程度に差はなく、慢性炎症によって誘導される肝臓の線維化にはILC2からのIL-5は必須ではないことが明らかとなった。 マウスに油脂溶媒を腹腔内投与することで肝臓内ILC2にIL-5産生を誘導できることを我々は新たに発見した。その機構を明らかにするため、オリーブオイル、不完全フロイントアジュバント等の様々な溶媒を腹腔内投与したところ、いずれの場合もIL-5産生が誘導された。更に別のマウスから採取した皮下脂肪、内臓脂肪を腹腔内投与してもIL-5産生が誘導された。またオリーブオイルの経口投与では肝臓ILC2のIL-5産生は誘導されなかった。これらの実験の際に脂肪のILC2についても解析したところ、脂肪ILC2は肝臓のものよりも活性化していること、更に油脂溶媒によってより強くIL-5産生が誘導されることを明らかにすることができた。これらの現象は腹腔内細胞の除去によって観察できなくなることから他の細胞を介した活性化の可能性が示唆される。これまでに知られていないILC2の新規活性化機構の解明が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に掲げたIL-5欠損条件下での肝臓線維化誘導実験を予定通り終了させることができた。しかしながら予想に反してIL-5は肝臓の線維化発症に必須ではなかったので、来年度以降の研究の進め方について考慮する必要がある。また油脂溶媒投与による新規IL-5産生誘導機構の解析については別のマウスの脂肪組織を始めとした種々の油脂溶媒を用いた解析、腹腔内細胞除去条件での検討をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画に従って研究を遂行していくが、IL-5が慢性炎症による肝臓の線維化誘導に必要ではないことが判明したため、当初計画していた抗IL-5抗体を用いたIL-5の阻害実験は行う必要がなくなった。IL-5によって活性化される好酸球は組織修復に必要であるという報告もあるため、今後は肝臓に障害が与えられた後の組織修復におけるIL-5、好酸球の役割について検討を進めたい。また肝臓ILC2と共に、油脂溶媒投与でより活性化される脂肪ILC2についても解析を進めていきたいと考えている。
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