研究実績の概要 |
前癌病変(Pancreatic intraepithelial neoplasia: PanIN)と通常型膵癌の各段階を観察できる遺伝子改変マウス膵癌モデルの組織を用いた予備的検討から、正常膵とPanIN組織及び通常型膵癌組織で段階的に、あるいは病態特異的に、発現量が変化するmicroRNAがあることが想定されている。本研究では、これら膵多段階発癌の過程で発現量が変化するmicroRNAの同定機能解析を行う。 今年度はマウス膵がんモデル由来組織の経時的な変化として、特にPanINと通常型進行膵癌の組織内でのmicroRNAの発現量変化をmiRNA microarrayを用いて網羅的に検定した。その結果、検討した2000種以上のmiRNAの中で、miR-21, miR-192, miR-194, miR-31, miR-142-5p などが正常膵組織と比較して通常型膵癌で強度に発現が増えていた。いっぽう、miR-802, miR-675, miR-187 などで強く発現が減少していた。それらのうち、miR-21, miR-192, miR-194, miR-31 は、PanINの段階でも すでに正常膵組織に比較して発現が増えていたが、例えばmiR142-5pはPanINの段階では増加しておらず、PanINから通常型膵癌に進展する過程で初めて発現量が変化するmiRNAとして抽出された。いっぽう減少しているmiRNAのなかでは、miR-802, miR-675 はPanINの段階で既に発現が減少していたが、miR-187はPanINの段階では変化が無く、こちらもPanINから通常型膵癌への進展に相関してはじめて発現量が減少するmiRNAであることが示唆された。
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