研究課題
前癌病変(Pancreatic intraepithelial neoplasia: PanIN)と通常型膵癌の各段階を観察できる遺伝子改変マウス膵癌モデルの組織を用いた予備的検討から、正常膵とPanIN組織及び通常型膵癌組織で段階的に、あるいは病態特異的に、発現量が変化するmicroRNAを同定している。本研究では、これら膵多段階発癌の過程で発現量が変化するmicroRNAの生物学的機能を、腫瘍形成性の観点から、不死化ヒト正常膵管細胞や遺伝子改変マウスから樹立したPanIN細胞、およびtransgenic mouse 作製によるin vitro, in vivo model で検討し、膵発癌に関与するmicroRNAとその生物学的機能を明らかにする。そのうえで、その知見を背景にした介入法を考案し、膵発癌予防法・診断法・治療法の開発につなげることを目的とする。今年度は 段階的に発現が増強するmicroRNAとしてmicroRNA125bに着目し、それが発現が変化するだけでなく 細胞内の局在が細胞質から核内に移行することを見出した。そこで もともと細胞質での機能がどのように変化するか、核内に移行することによって新たに得られる機能があるのか、を検討する準備を進めている。特に不死化したヒト正常膵管細胞を3次元培養すると核内に移行することから、核内に移行する機序についても検討を始めている。これらの結果は細胞内でのmicroRNAの局在変化という発見に伴って、癌化過程における何らかの新知見をもたらす可能性がある。今年度はそれがさらにある遺伝子のスプライシングに関与していることを見いだした。核内microRNAが遺伝子のスプライシングに関与している報告は多くなく 現在さらに解析を加えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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