研究実績の概要 |
1.胆管上皮特異的Kras, TGFbR2, E-cadherin変異によって、胆管壁浸潤型の肝外胆管癌マウスモデルが樹立されたが、その発癌過程を調べるため、遺伝子改変誘導後の肝外胆管組織を時系列変化を詳細に解析した。すると1週間後から、胆管表層上皮細胞がE-cadherin欠損によってボロボロと胆管内腔に脱落し、胆管周囲に強い炎症反応が生じ、さらに胆管前駆細胞ニッチと考えられている胆管付属腺に強い再生反応が生じていた。またこの時点で胆管付属腺に強い異型性が認められたことから、胆管上皮障害による胆管前駆細胞の増殖刺激が、発癌を促進している可能性が考えられた。
2.肝外胆管からオルガノイドを培養し、レンチウイルスを用いてKras, TGFbR2, E-cadherinの遺伝子改変を行ったうえで、マイクロアレイ解析を行ったところ、IL-33という炎症性サイトカインの発現が著明に上昇していることが分かった。IL-33は死んだ細胞が放出するalarminとして知られ、さらに最近胆管上皮の増殖に関与していることが報告されている。そこでE-cadherinによって生じる死細胞がIL-33を放出し、発癌を促進していると考え、胆管上皮特異的Kras, TGFbR2変異をマウスにIL-33を投与したところ、肝外胆管から肝門部まで著明な腫瘍性変化を生じることが明らかとなった。すなわちIL-33はKras, TGFbR2の変異と強調して癌を促進していくことが分かった。現在その詳細なメカニズムについて解析中である。
|