研究実績の概要 |
胆管上皮特異的Kras, TGFbR2, E-cadherin変異によって、胆管壁浸潤型の肝外胆管癌マウスモデルを樹立することに成功し、その時系列変化および細胞系譜解析によって胆管周囲付属腺にその起源があることを突き止めた。またその発癌促進機構を解明するためマウス肝外胆管からオルガノイドを樹立し、Cre発現レンチウイルスを用いてKras, TGFbR2, E-cadherinの遺伝子改変を誘導し、マイクロアレイを行った。その結果、E-cadherin欠失によって障害を受けた胆管上皮細胞がアラームシグナルとしてIL-33を放出し、2型自然リンパ球を呼び込み、さらにIL-13、Amphiregulinの分泌を介して胆管付属腺に再生反応を促しており、この現象が結果として胆管付属腺からの発癌を促進していることがわかった。実際にIL-33中和抗体を投与することによって、本マウスの発癌を抑制することができた。さらに興味深いことに、IL-33は肝内胆管に比べて肝門部から肝外胆管に強い増殖作用を有しており、胆管の解剖学的部位によってサイトカインに対する感受性が異なることもわかった。一方、E-cadherin欠失は細胞接着の消失によってHippo経路を抑制、YAP経路を活性化させ、直接的にも発癌に寄与していることもわかった。またヒト肝外胆管癌組織を用いてpERK,Smad4,E-cadherinの免疫染色を行ったところ、19.4%に今回のマウスモデルと同様の経路の異常がみられることがわかった。現在同マウスモデルを用いてさらに胆管癌発症機序の解明を進めている。
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