研究課題
申請者らは過去の研究により、膵嚢胞が存在すると膵液中に変異Kras遺伝子が多く検出されることを見出した (Tateishi K, Tada M et al. Gut 1999)。それを契機として、IPMN(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)を中心とした膵嚢胞病変の経過観察を行い、嚢胞を有する症例からの膵癌発症が、一般人口の膵発癌率0.03%に比して、年率0.6%と高率であることを突き止め、IPMNを含めた膵嚢胞は膵癌の高危険群である可能性を提唱した(Tada M, Tateishi K et al. Clin Gastroenterol Hepatol 2006;4:1265-1270、Tada M. Clin Gastroenterol Hepatol 2007;5:522.)。また我々は主膵管型IPMNを多く認めるMUC2陽性intestinal type IPMNでは、smad1/5/8のリン酸化が有意に認められることを明らかにし、主膵管型と分枝型の亜型ごとに腫瘍化のメカニズムが異なる可能性を報告した(Mohri D, Tada M et al. J. Gastroenterology. 2012;47(2):203)。本研究では発癌を伴ったIPMN症例においてIPMN粘膜と癌部組織、さらには非癌部の組織をマイクロダイセクションにて選択的に抽出し、その部位での様々な遺伝子変異をターゲットリシークエンシングによりマッピングする。またグローバルなレベルでのDNAメチル化状態を比較する。主膵管型、分枝型それぞれにおいて、変異遺伝子の分布、DNAメチル化レベルからみたIPMN膵内の発癌経路および前癌病変のプロファイルを明らかにし、両者の比較を行う。
2: おおむね順調に進展している
IPMNにて手術が行われた症例に対し、倫理委員会ですでに承認の得られている同意説明文書にて十分に説明し、文書同意を得た後、血清、膵液、IPMN部・非癌部の組織、さらに存在すれば癌部の組織を取得してきた。これらの患者の臨床情報については個人情報保護を遵守しつつ詳細な情報を記録するデータベースを構築してきた。組織検体は一部パラフィンブロック、凍結ブロックとして保存、それぞれの切片から、腫瘍部、非腫瘍部の部分を回収しそれぞれのDNAを抽出した。この際、腫瘍部・非腫瘍部をレーザーマイクロダイセクションにより多数分離採取しそれぞれ腫瘍、非腫瘍特異的なDNAを抽出した。数種類の遺伝子変異について既に検討を行い、データ解析中である。
さらに検体数を増やしIPMN部・癌部の組織間での遺伝子変異の相違などについて解析する。またDNAメチル化レベルについても検討予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Nihon Shokakibyo Gakkai Zasshi.
巻: 112 ページ: 1474-8
10.11405/nisshoshi.112.1474.