研究課題
申請者らは過去の研究により、膵嚢胞が存在すると膵液中に変異Kras遺伝子が多く検出されることを見出した (Tateishi K, Tada M et al. Gut 1999)。それを契機として、IPMN(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)を中心とした膵嚢胞病変の経過観察を行い、嚢胞を有する症例からの膵癌発症が、一般人口の膵発癌率0.03%に比して、年率0.6%と高率であることを突き止め、IPMNを含めた膵嚢胞は膵癌の高危険群である可能性を提唱した。近年、IPMNにも複数のタイプがあることが明らかになり、臨床形態的には主膵管型と分枝型に分類される。主膵管型IPMNを多く認めるMUC2陽性intestinal type IPMNでは、通常型膵癌と比較し、Kras遺伝子変異が少なく、頻度は低いながら通常型膵癌ではみられないPIK3CA遺伝子の活性化変異が報告されている。一方我々はsmad1/5/8のリン酸化がintestinal-typeで有意に認められることを明らかにし、主膵管型と分枝型の亜型ごとに腫瘍化のメカニズムが異なる可能性を裏付けた(J. Gastroenterology. 2012;47(2):203)。主膵管のintestinal type IPMNの悪性化例はいわゆる近接した部位に生じるIPMN由来膵癌であることが多いが、一方で分枝膵管型はIPMNと離れた部位にPanINを介する通常型膵癌が合併する場合がある。今回の研究では手術で得られた組織検体において遺伝子変異およびDNA メチル化レベルをマッピングし、IPMN からの発癌経路について検討した。具体的には発癌を伴ったIPMN症例においてIPMN粘膜と癌部組織、さらには非癌部の組織をマイクロダイセクションにて選択的に抽出し、その部位での遺伝子変異をターゲットリシークエンシングによりマッピングする。またグローバルなレベルでのDNAメチル化状態を比較した。
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Pancreas
巻: 46 ページ: 801-805
doi: 10.1097/MPA.0000000000000833.