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2015 年度 実施状況報告書

肝内胆管癌におけるIDH変異の生物学的意義の統合的解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K09043
研究機関東京大学

研究代表者

木暮 宏史  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60568921)

研究分担者 立石 敬介  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
濱田 毅  東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (90723461) [辞退]
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード肝内胆管癌 / エピジェネテイクス
研究実績の概要

胆管癌は5年生存率10%と予後不良な疾患である。根治的切除後の再発例も多く、切除不能例に対する化学療法の効果も乏しい。次世代シークエンスにより、肝内胆管癌においてIDH遺伝子が高頻度に変異していることが明らかとなった。IDHはイソクエン酸を還元しα‐ケトグルタル酸を産生する酵素である。細胞内には様々なα‐KG依存性脱水素酵素が存在し、その中にはDNAやヒストンの脱メチル化に働く酵素、HIF1αの分解に関係する酵素などがある。IDH遺伝子に変異が起こると、α‐KGから新たに2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)が産生され、2-HGにより前述の酵素活性が阻害される。その結果、細胞内のエネルギー代謝に影響するだけでなく、エピジェネティックな遺伝子発現制御や血管新生シグナリング、癌にも関連がある。
胆管癌におけるIDH変異については臨床・基礎的研究とも未だ報告は少ないが、グリオーマやAML同様、腫瘍形成に関与する可能性が示唆されている。肝前駆細胞にIDH1変異(R132C)を強制発現させると、HNF-4α発現が低下し、肝臓への分化が抑制され、胆管系への分化が促進される。さらにはKRAS変異と合わさると肝内胆管癌を発生する(Nature. 2014;513(7516):110-4)。一方、臨床データからはIDH変異を有する肝内胆管癌の予後は良好であるとする報告も見られるが、実際の肝内胆管癌の生物学的特性におけるIDH変異の役割については未だ不明な点が多い。本研究では肝内胆管癌における臨床的意義を検討する。分子メカニズムについても変異特有の代謝産物2-HGの産生によるエネルギー調節への影響、エピジェネティックな遺伝子発現制御や血管新生シグナリングを介した影響など複数の要因が考えられるため、それらを統合的に検討する。IDH変異陽性の肝内胆管癌の表現型に関わる分子群も探索し、最終的にはIDH変異の有無による肝内胆管癌の層別化、特異的な治療選択法確立への手掛かりを追及する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトIDH1,2をサブクローニングし、ヒト肝内胆管癌でみられるIDH1 R132C/G/S/LおよびIDH2 R172Wの発現コンストラクトをmutagenesis法にて作成した。ヒト肝内胆管癌細胞HUCCT, HUH28に野生型IDHあるいは各々の変異型をそれぞれ遺伝子導入し、安定発現株を樹立した。変異IDH1の発現に伴うα-KGから2-HGの産生を確認するために、質量分析計を用いて2-HGを定量した。樹立した胆管細胞癌細胞株を用いて、増殖能・遊走能・浸潤能・足場非依存性増殖能・腫瘍形成能・ストレス応答などの項目について比較検討を行った。

今後の研究の推進方策

野生型および変異型IDH1導入胆管細胞のそれぞれからRNAを抽出し、DNAアレイにて遺伝子発現の網羅的解析を行う。影響を受けた遺伝子群についてGene ontology解析およびGSEA解析などを行う。一方でアレイ結果については定量的PCRによってもvalidationを行う。この検討により、変異IDHにより特異的に誘導、活性化される遺伝子発現・転写因子群などを探索・抽出する。

次年度使用額が生じた理由

発現アレイの結果から抽出された遺伝子数が予想よりやや少なかったため、定量的PCRにかかる費用が予想より安価となったため。

次年度使用額の使用計画

次年度に予定している細胞株の増殖能や浸潤能などの生物学的評価に使用する計画を立てている。

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公開日: 2017-01-06  

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