研究課題
肝内胆管癌の約20%に見出されるIDH1,IDH2 変異について、その生物学的意義を解析する。同様にIDH 変異が見出される白血病、グリオーマなどにおいて、臨床予後に対する影響が癌種によって異なることから、肝内胆管癌における臨床的意義を検討する。分子メカニズムについても変異特有の代謝産物2-HG の産生によるエネルギー調節への影響、エピジェネティックな遺伝子発現制御や血管新生シグナリングを介した影響など複数の要因が考えられるため、それらを統合的に検討する。IDH 変異陽性の肝内胆管癌の表現型に関わる分子群も探索し、最終的にはIDH 変異の有無による肝内胆管癌の層別化、特異的な治療選択法確立を目指す。ヒト肝内胆管癌でみられるIDH1 R132C/G/S/L およびIDH2 R172W の発現コンストラクトをmutagenesis 法にて作成した。マウス肝内胆管細胞に野生型IDH あるいは各々の変異型をそれぞれ遺伝子導入し、安定発現株を樹立した。変異IDH1の発現は変異型特異的抗体で確認、また質量分析計で2-HGの増加を確認した。グローバルレベルでのゲノムDNA メチル化および各種ヒストンメチル化修飾の違いを野生型および変異型導入細胞についてそれぞれドットブロット半定量系、H3K4、H3K9、H3K27、H3K36、H3pan-ac、H4pan-ac などの各種抗体を用いてImmunoblot にて評価した。変異型発現細胞では予想通りヒストン修飾に影響がみられた。さらに変異型IDH1発現胆管細胞は対照にくらべて増殖能の増加がみられ、その背景にIDH変異による遺伝子発現変化と代謝制御変化が見出された。本研究により胆管癌におけるIDHの意義とその分子学的機序を明らかにしうると考えられる。
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