研究課題/領域番号 |
15K09045
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川 茂幸 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10177628)
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研究分担者 |
太田 正穂 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (50115333)
伊藤 哲也 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (50748605)
亀子 文子 純真学園大学, 検査科学科, 准教授 (60126670)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己免疫性膵炎 / IgG4関連疾患 / 悪性腫瘍 / 標準化死亡比 |
研究実績の概要 |
自己免疫性膵炎 (autoimmune pancreatitis:AIP)、IgG4関連疾患 (IgG4-related disease:IgG4-RD)と悪性腫瘍合併に関する検討。AIP、IgG4-RDは有意に悪性腫瘍合併が多かったが、生命予後については不明である。診断後3年以上の経過を追えたAIP患者を対象とした標準化死亡比(SMR)は0.61(95%信頼区間:0.33~0.90)であり、一般人口よりも有意に死亡が少なかった。厳重なフォローにより疾患が早期発見されることが良好な生命予後に寄与している可能性がある。またAIPは高齢者が多く悪性腫瘍以外の因子が死亡に関連していている可能性がある。IgG4陰性AIP例は一般的に活動性が低いが、長期予後については不明である。IgG4陽性AIP 84例と陰性12例の臨床所見、長期経過を比較検討した結果、IgG4陰性群で女性比率が有意に高く、長期経過の比較では膵石、悪性腫瘍、死亡には両群間で有意差を認めなかった。Kaplan-Meier法による長期経過の解析では、IgG4陽性群で再燃が陰性群に比較して有意に多かったが、悪性腫瘍発生、死亡率については両群間で差を認めなかった。従って、IgG4陰性例でも長期にわたる注意深い観察が必要と考えられた。 AIP発症に関連する遺伝的背景の検討。GWAS解析で自己免疫性肝炎における疾患感受性候補遺伝子として報告されたS2BH3について、AIPとの関連解析を行った。SH2B3遺伝子はサイトカインのシグナル伝達やT細胞活性化の負の調整に関わっている。SNPs単独では相関を示さなかったが、ハプロタイプで抑制性の相関を認めた(p=0.03)。欧米人で強い感受性を示した非同義置換を示すrs3184504は、日本人において多型が見られなかった。この遺伝子内に疾患と相関する新たなSNPの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患と悪性腫瘍発生に関して有意な関連を確認し、これらの長期の生命予後についても明らかにすることができた。また、疾患活動性が低いと考えられていたIgG4陰性例の長期予後についても、陽性例と同様であり、長期の注意深い経過観察が必要なことが明らかとなった。また、これら疾患発症に関連する免疫遺伝学的検討では、今年度は自己免疫性肝炎における疾患感受性候補遺伝子としてサイトカインのシグナル伝達やT細胞活性化の負の調整に関わっているSH2B3がGWAS解析にて報告されたので、AIPについても遺伝子内のSNPsを用いて相関解析を行った。可能性の高い候補遺伝子、悪性腫瘍発症に関連する候補遺伝子についても順次検討を進めていく予定である。。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患と悪性腫瘍発生に関連する免疫遺伝学的背景の検討、自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患発症に関連する遺伝子について検索する。自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患と膵癌や悪性リンパ腫など個々の悪性腫瘍についても有意に発症するか検討する。自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患で感染防御や自然免疫で活躍するNK細胞のレセプターKIR (Killer cell Ig-like receptor)をタイピングし、悪性腫瘍発症に抑制性KIRあるいは活性化KIRの関与を検討する。KIRタイピングは real-time PCR を用いた方法で判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患と悪性腫瘍発生に関連する免疫遺伝学的背景の検索、自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患発症に関連する遺伝子について検索する予定が、次年度に一部繰り越してしまい、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成29年度請求額と合わせて、上記の検索及び検討を行うため、主に消耗品費として使用するとともに情報収集及び得られた結果の発表に使用する計画である。
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