研究課題/領域番号 |
15K09046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 祐紀子 九州大学, 大学病院, 助教 (10404021)
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研究分担者 |
難波江 俊永 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10467889)
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / leading cells / 基質リモデリング |
研究実績の概要 |
膵癌浸潤におけるleading cells を同定するために、コラーゲン・ゲルを用いた三次元共培養モデルを作成した。膵癌細胞と膵星細胞を三次元培養したところ、癌細胞および膵星細胞単独群では、コラーゲン・ゲル内へと浸潤する細胞はほとんどみられなかったのに対して、膵癌細胞と膵星細胞を共培養した群においては浸潤する細胞数は有意に増加し、癌細胞の浸潤を先導するかたちで膵星細胞の浸潤がみられた。またコラーゲン・ゲルに注目すると、細胞が浸潤したコラーゲン・ゲルは、浸潤がなかったものと比較してゲルは収縮し、厚みも増しており、さらにコラーゲン・ゲルの線維方向が、細胞の浸潤方向に沿って有意に変化していた。これらより、膵星細胞は基質のリモデリングを行って、癌が浸潤しやすい環境を整え、癌の浸潤を促進していると考えられた。 基質リモデリング因子の一つとしてコラーゲン取り込みレセプターであるEndo180に注目した。Endo180 は膵星細胞で発現が強くみられ、膵癌細胞とEndo180を抑制した膵星細胞との共培養においては、膵星細胞のコラーゲン・ゲル内への浸潤は有意に抑制され、それに伴って浸潤する癌細胞も有意に減少した。 膵癌においては leading cellsの役割を担う膵星細胞が存在すると考えられた。Leading cellsの役割を担う膵星細胞は基質リモデリングを行って、コラーゲン線維の配列を変化させることで癌の浸潤を促進している可能性がある。膵星細胞の基質リモデリング因子の一つとしてEndo180があり、このEndo180を標的とすることで膵癌の浸潤抑制が期待できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三次元共培養モデルを作成し、膵癌と膵星細胞との共培養において、膵癌浸潤を先導するleading cellsの役割を担う膵星細胞を同定できた。さらにleading cellsの役割を担う膵星細胞は、浸潤する際にコラーゲンの線維配列を変化させており、基質リモデリングによって癌浸潤を先導していることが示唆されたことなど、leading cellsの同定およびその機能の解析について、一定の成果を得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌においては leading cellsの役割を担う膵星細胞が存在し、Leading cellsの役割を担う膵星細胞は基質リモデリングを行って、コラーゲン線維の配列を変化させることで癌の浸潤を促進していると考えられる。 膵星細胞の基質リモデリング因子のひとつとしてEndo180を同定しており、Endo180を抑制することでどのような機序で膵星細胞の基質リモデリングが抑制されるか検討を行っていく。またleading cellsの制御において、Endo180が治療標的となりうるか、マウスを用いた抑制実験などを行い有効性の検討を行っていき、leading cells を標的とした新規分子標的治療の開発をめざす。 その一方でさらに、leading cellsのEndo180以外の関連因子の検討や、基質リモデリング以外の機能についても検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は順調に進展しており、有効に資金を使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類、抗体、培養用試薬、培養用器材等
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