研究実績の概要 |
N-methyl-N-formylhydrazine (MFH)に対するICRマウスの忍容性を検討するための実験を行った。12匹の雄性ICRマウスを3群に分け、MFH100mg/kg, 50mg/kg x2 (day 0, 3), 0mg/kgを強制胃内投与し、day 7に安楽死させ胆嚢を病理組織学的に評価した。また、胆嚢上皮細胞の増殖、アポトーシス、二重鎖DNA切断をそれぞれKi-67, TUNEL, γH2AXを用いて免疫組織化学的に検討した。実験期間中、MFH暴露後に死亡する個体は見られなかった。前年度試験で薬剤投与48時間後に観察された肝臓小葉中心性の壊死は、7日後には微小肉芽性炎症へと変化しており回復傾向がみられた。胆嚢上皮は組織学的に軽度の乳頭状構造を示し、断頭分泌像も観察されたが、2日目で見られた細胞密度や核分裂像の増加は目立たなかった。Ki-67, TUNEL, γH2AX陽性細胞率は群間で有意差はないものの、非暴露群と比較して暴露群では低下傾向がみられた。以上の結果から、MFH 100mg/kg, 50mg/kg x2投与に対してICRマウスは忍容性が高く、肝臓、胆嚢組織の回復傾向が顕著なことよりイニシエーターとして適切であり、長期実験可能な物質であると考えられた。 次にマウス以外の動物に対するMFHの胆嚢上皮障害性を検討した。雌性ハムスターにMFH100mg/kg, 50mg/kg, 0mg/kgを強制胃内投与し、day 3, 7に胆嚢上皮細胞、肝細胞の増殖能をKi-67の免疫染色を用いて評価した。胆嚢上皮細胞、肝細胞におけるKi-67陽性細胞率はday 3で用量依存性に増加し、day 7でいずれのMFH暴露群もコントロール群のレベルにまで低下した。以上よりハムスターもMFHに対して胆嚢発がんイニシエーション作用を有する可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、マウス胆嚢発がんイニシエーターのN-methyl-N-formylhydrazine (MFH)とプロモーターのデオキシコール酸の用量設定、および高感受性マウス種の選定が終了した。現在、ICRマウス、MFH、デオキシコール酸を用いて胆嚢発がん中長期実験を行っている。48匹の雄性ICRマウスを4群に分け、1,2群にはそれぞれ100mg/kg 1回, 50mg/kg 2回のMFHを強制胃内投与し、3, 4群にはvehicleである生理食塩水を与えた。1-3群にはMFH投与1週間後よりデオキシコール酸の投与を開始し、4群は対照群とした。現在までに明らかな毒性による死亡例はなく、順調に進行している。
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