研究課題
進行膵臓癌における免疫応答について検討するため、進行膵臓癌に対して実施してきた「WT1ヘルパー/キラーペプチドパルス樹状細胞併用化学療法」の臨床試験サンプルを用いた免疫モニタリングを実施した。その結果、下記の事が明らかになった。(1) 本治療で、腫瘍サイズが縮小した例は認められなかったが、長期生存を認めた例は、治療早期より血漿中のIL-6とIL-8は低下した。更に、IL-6とIL-8の低下は治療中長期に及び低下が認められた。したがって、血漿中のIL-6とIL-8は生命予後のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。(2) 血漿中のPDL1は本治療により低下が認められたが、生命予後との有意な相関は認められなかった。したがって、進行膵臓癌の免疫抑制を解除することが重要であると考えられた。また、膵臓癌局所と末梢血中の免疫担当細胞と生命予後の関係について検討した。その結果、膵臓癌局所のCD163陽性マクロファージとCD66b陽性好中球の増加は生命予後と相関していた。更に、末梢血中の好中球/リンパ球比(NLR)と膵臓癌局所のCD163陽性マクロファージ及びCD66b陽性好中球の増加は相関していた。したがって、癌局所の免疫反応を改善するような治療法の開発が、重要であると示唆された。
2: おおむね順調に進展している
膵臓癌局所及び末梢血中の免疫担当細胞と治療効果の有無について検討し、新規性のある結果が得られた。
今後、腫瘍抗原や腫瘍局所の免疫抑制細胞の役割を詳細に検討し、膵臓癌局所をどのような免疫状態することが、進行膵臓癌の生命予後を改善することに寄与できるか検討を重ねる。その結果を踏まえ、新臨床試験を実施する。
1年目は、進行膵臓癌に対して実施してきたWT1ヘルパー・キラーペプチドパルス樹状細胞療法の免疫モニタリングを実施した。この免疫モニタリングの結果を踏まえて、2年目後半から新規臨床試験の実施を行う。したがって、1年目よりも2年目以降に使用額が増えるため、次年度使用額が増加することが予想される。したがって、申請時と比較し2年目の使用額が増加した。
2年目に、免疫を誘導するために、より効果的な樹状細胞の作製を試みる。それに必要な消耗品(GM-CSF、IL-4、OK-432、PGE2、Zometa、alphaGalCel、腫瘍抗原ペプチドなど)を中心に購入する。また、樹状細胞の評価のために必要なELISAやFACS用の抗体なども購入する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
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