研究課題
WT1を標的とした免疫療法とゲムシタビン(GEM)を併用した第I相臨床試験を実施してきた結果、WT1特異的免疫反応(WT1-DTH)が誘導できた症例は、全生存期間(OS)が有意に延長していた。従って、進行膵癌に対して、WT1を標的とした免疫療法の有効性を明らかにするため、多施設共同ランダム化第Ⅱ相試験を実施し、免疫誘導の有無と治療効果との関連を検討した。進行を対象とし、GEM併用WT1ペプチドワクチン(GEM/WT1)群とGEM単独群へ1:1にランダム割付した。進行膵癌85例が最終的に解析可能であった。1年OS%は、GEM/WT1群35.7%、GEM群20.9%であった。無増悪生存期間(PFS)は、GEM/WT1群157日、GEM群100日であった。GEM/WT1群の50%で治療後にWT1-DTH陽性化を認めた。転移膵癌でGEM/WT1群DTH(+)、GEM/WT1群DTH(-)、GEM群の、1年OS%は40.0%、20.0%、13.3%、PFS中央値は198日、87 日、100日であった。GEM/WT1群のDTH(+)例で末梢血中のWT1-CTLが治療後に顕著に増加した。したがって、進行膵癌においてWT1ペプチドワクチンによるWT1特異的免疫反応の誘導が、治療効果の改善に寄与している可能性が示唆された。膵癌に対してWT1樹状細胞ワクチンの新規臨床試験を実施する上で、膵癌細胞におけるWT1の発現の有無と臨床的意味を検討する必要性がある。免疫組織化学的な方法を新たに確立することにより、検討した膵癌手術50症例全例において、膵癌細胞の細胞核および細胞質にWT1の発現を認めた。膵臓癌の細胞質におけるWT1の低発現群は、中~高発現群と比較し、有意差にOSと無病生存期間(DFS)が延長していた。したがって、WT1を標的とした治療法を開発が期待される。
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