研究課題
1型自己免疫性膵炎を始めとするIgG4関連疾患は、血清IgG4が高値であること標的臓器においてIgG4陽性形質細胞の浸潤が特徴であり日本発の疾患概念である。しかし研究の途に着いたばかりで、IgG4の役割を始め未だ未解明な部分が多数残されている。我々は現在までにICOS陽性制御性T細胞がIgG4産生にICOS陰性制御性T細胞が線維化に関与していることnaive制御性T細胞の減少が発症に関与しており、制御性B細胞については、CD19+CD24highCD38high Breg は疾患の活動を抑制しようと反応性に増加しCD19+CD24highCD27+ Bregの減少がn-Tregと相まって発症に関与していること、TLR7シグナルを介したM2マクロファージが本疾患のTh2免疫反応、線維化に関与している可能性があることを報告してきた。また能登原らは、このM2マクロファージが本疾患の特徴である花筵状線維化に深く関わっていることを報告している。本年度はM2マクロファージの上流に位置すると考えられている好塩基球と自然免疫の関係についてヒトにおいての解析に取り掛かった。患者末梢血中の好酸球のTLRシグナルを刺激することでどのような反応をするのか、膵組織における好酸球について解析した。1型自己免疫性膵炎患者の好塩基球を特定のTLRシグナルで刺激すると活性化することを見出した。また1型自己免疫性膵炎患者の膵組織に好塩基球が浸潤していることも見出した。以上のことより、1型自己免疫性膵炎におけるM2マクロファージの反応は好塩基球を介して行われている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、1型自己免疫性膵炎患者の好塩基球を特定のTLRシグナルで刺激すると活性化することを見出すとともに、1型自己免疫性膵炎患者の膵組織に好塩基球が浸潤していることも見出した。本研究成果は現在投稿中である。以上のことより、本年度予定していた1型自己免疫性膵炎における好塩基球の反応について、ヒトにおける解析に取り掛かかることができたと考える。
1型自己免疫性膵炎における好塩基球の役割、特にM2マクロファージとの関係についてヒトにおいてさらに解析を進めるとともに、動物モデルの作成並びに解析を行う予定である。特に動物モデルの膵組織における好塩基球、M2マクロファージの解析は、ヒトでは困難な発症早期からの好塩基球、M2マクロファージの動態を経時的に解析できることになり1型自己免疫性膵炎を始めとするIgG4関連疾患の発症機序の解明に役立つものと考えられる。
消耗品購入において端数が生じたために次年度使用額が生じたが、年度内に端数を使いきるよりは次年度に合わせて使用した方が研究費を有用に活用できると判断したため。
来年度の消耗品購入の費用として合算して使用する予定。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件)
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