急性膵炎は局所の炎症にとどまる軽症例から、多臓器不全を合併して致命的となり得る重症例まで多彩な臨床像を呈する疾患である。膵炎発症には膵組織内での消化酵素の活性化による自己消化が主因とされてきたが、近年宿主の免疫反応の関与も提唱されている。これまでの検討では、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10(IL10)欠損マウスをTLRリガンドで刺激すると野生型マウスと比較して膵炎が増悪した。さらに、IL10を産生するB細胞が欠損したCD19欠損マウスにセルレインで膵炎を誘導したところ、野生型マウスと比較して膵炎の増悪が認められた。以上の結果からIL10産生B細胞の存在が膵炎の軽減に関与することが明らかとなった。本年度は、CD19欠損マウスにTLR3リガンドであるポリI:Cを投与してマウス自己免疫性膵炎の発症について検討した。野生型マウスにポリI:Cを投与しても膵炎は発症しなかったが、CD19欠損マウスにポリI:Cを投与するとIL10欠損マウスにポリI:Cを投与した時と同様の自己抗体産生を伴った膵炎の発症が認められた。RAG2欠損マウスに膵炎発症マウスの脾臓細胞を養子移入すると同様の膵炎が発症したことから、CD19欠損マウスにポリI:Cを投与して誘導される膵炎は自己免疫的機序によるものと考えられた。以上の結果から自己免疫性膵炎発症にIL10産生B細胞が抑制的に作用していることが示唆された。
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