研究課題
膵臓癌・食道癌・胃癌・大腸癌といった消化器癌細胞において発現・分泌されるルミカンを比較解析することで、糖鎖修飾構造の異なる膵臓癌細胞において特異的に発現・分泌されるルミカンを同定するため、前年度の検討においてルミカンタンパク質の過剰発現を確認することができなかった発現ベクターとは異なるタグ付のルミカン発現ベクターを新たに構築し、これを培養消化器癌細胞に遺伝子導入を行った。培養膵臓癌細胞であるBxPC-3と培養食道癌細胞であるOE33の2種類の細胞に遺伝子導入を行った結果、いずれの細胞においても対照細胞と比較して、遺伝子導入を行った細胞においてルミカンの遺伝子発現が、有意に上昇していた。次に培養液中に分泌されたルミカンのタンパク質を精製するため、タグに対して親和性を示す担体を用いたアフィニティー抽出を試みた結果、それぞれの細胞により培養液中に分泌されたルミカンを抽出することに成功した。食道癌と膵臓癌細胞から精製してきたルミカンの発現パターンの違いを検討した所、一部発現パターンの異なるルミカンが存在することが示唆された。また、膵臓癌細胞で発現しているルミカンの機能についても解析を行った。これまでの検討により明らかとなっていた、ルミカンの発現を抑制した際に膵臓癌細胞の増殖が抑制される機構について検討を行ったところ、培養膵臓癌細胞であるPANC-1のルミカンの発現を抑制するとアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、膵臓癌及び食道癌においてルミカンの過剰発現細胞を調製し、それぞれの細胞から培養液中に分泌されるルミカンを精製することができた。発現パターンの解析ができつつあるが、そこから糖鎖修飾構造の解析を行うのに十分なルミカンを確保するために今後も引き続き複数回精製の過程を行う必要があるが、それぞれの細胞に特異的に発現するルミカンを解析するための手法が確立することができるようになってきたため。
現在、糖鎖修飾構造の解析を行うために十分な量のルミカンを精製することができていないので、引き続き培養消化器癌細胞に遺伝子導入を行い精製を行っていく。また、胃癌及び大腸癌細胞に対しても同様の手法を用いて、それぞれの細胞から分泌されるルミカンの精製を実施し、膵臓癌細胞に特異的に発現しているルミカンの解析を行っていく予定である。
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Tumor Biol.
巻: 37 ページ: 13595-13606
10.1007/s13277-016-5275-8