研究課題
本研究は、難治性の膵癌に対する新しい治療法開発を最終目標に、膵癌幹細胞と通常癌幹細胞のエネルギー獲得機構の相違、癌間質細胞が与える影響の違いを明らかにするため以下の解析を行うことを目的としている:1)ヒト膵癌組織を免疫不全マウス皮下に移植して作製したPatient-derived xenograft(PDX)にPKM2siRNAを導入し、残存した細胞(癌幹細胞が濃縮)と起源細胞の代謝様式、分子発現様式の相違をメタボローム、マイクロアレイなどを用い網羅的に解析する;2)遺伝子改変膵癌マウス(Pdx1-Krasマウス)とPKMの発現型がPKM1に固定されているPKM1ノックインマウスあるいはPKM2ノックインマウスと掛け合わせ、代謝の変化が癌化・進展に与える影響を解明する;3)2)の結果生じる解糖系優位のマウス膵癌細胞(G-PC)とTCA回路優位の膵癌細胞(T-PC)を分離培養する;4)癌間質の性質に重要な役割を演じているPeriostinノックアウト(PTON-KO)マウスと遺伝子改変膵癌マウスを交配させ、間質の膵癌化・進展に対する影響を明確にする;5)3)で作製したG-PC細胞とT-PC細胞をPTON-KOマウスに同所移植し癌の進展への関与を検討する; 4)これらの結果を踏まえ、膵癌幹細胞に対する治療法を確立させる。現在まで、PKM2si膵癌細胞株を樹立し、PKM2の発現が減弱すると、膵癌増殖能や移動能が低下すること、xenograftにおいて発育が抑制されることを明らかにした。また、この細胞とコントロール細胞の代謝の相違を明らかにするためメタボローム解析を行ったところ、PKM2発現抑制によってピルビン酸とポリアミンが減少することをあきらかにした。現在、上記2)-4)について解析中である。
3: やや遅れている
膵癌細胞の性質に代謝酵素のPKM2が重要な役割を演じていることを明らかにしているが、動物実験施設の改修工事によって動物実験に後れを生じている。さらに、研究代表者の異動も加わり、遅れが生じている。
遺伝子改変膵癌マウス(Pdx1-Krasマウス)とPKMの発現型がPKM1に固定されているPKM1ノックインマウスあるいはPKM2ノックインマウスと掛け合わせ、代謝の変化が癌化・進展に与える影響を解明し、その結果生じる解糖系優位のマウス膵癌細胞(G-PC)とTCA回路優位の膵癌細胞(T-PC)を分離培養を試みる。癌間質の性質に重要な役割を演じているPeriostinノックアウト(PTON-KO)マウスと遺伝子改変膵癌マウスを交配させ、間質の膵癌化・進展に対する役割を明確にしていく。
研究代表者の前任地の動物実験センター改修と昨年度の代表者の異動によって、研究に遅れが生じているため。
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International Journal of Oncology
巻: 52 ページ: 881-891
10.3892/ijo.2018.4258