研究課題/領域番号 |
15K09056
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上里 昌也 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (70436377)
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研究分担者 |
松原 久裕 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20282486)
相川 瑞穂 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (90748675) [辞退]
浦濱 竜馬 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (50707221) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 周術期管理 / 内視鏡的粘膜下層剥離術 / 鎮静 / 呼吸障害 / モニタリング |
研究実績の概要 |
早期胃癌や食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)は、低侵襲で根治が期待できる胃・食道温存治療法である。近年、ESDは急速に普及しているが、今なお高度な技術を要し手術時間が長くなる場合もある。ところがわが国の多くの施設では、全身麻酔ではなく鎮静法でESDが行なわれている。鎮静法ではESD術者が鎮静管理を兼任する場合が多い。従って、ESD中の患者全身管理が十分でなくなる場合がある。特に鎮静下での患者呼吸状態の把握は、ESDの安全な施行のために必須である。そこで本研究では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断に使用されているポリソムノグラフィー(PSG)を用いて、鎮静下ESD中の患者呼吸状態を把握し安全な術中管理システムの構築を目的とした。平成27年度にはPSGを用いたプロポフォール下早期胃・食道癌ESD患者呼吸障害の早期検出を行うことを目標にしていた。 PSGは一呼吸ずつの換気状態を、それぞれの呼吸波形から視覚的にかつリアルタイムにとらえられた。またPSGはパルスオキシメーターではとらえられなかった呼吸障害を検知し、かつパルスオキシメーターで把握できた呼吸障害においては早期に検知できる特徴があった。これよりPSGは、鎮静下胃ESD中の新たな呼吸モニタリングとして有用であることが見いだせた。さらに、鎮静下ESDにおいて呼吸障害が起こりやすい症例の特徴を見出すことを平成28年度の目標とした。SASを有する群では有意に呼吸抑制を来しやすく、さらにSASの重症度が増すほど呼吸抑制の頻度が高くなる可能性が示唆された。これより、術前にSASの簡易スクリーニングとして広く使用されているSTOP questionを施行し、陽性だった場合に簡易終夜睡眠ポリグラフィー検査でSASの有無・重症度を評価する。さらにSASの重症度が高かった場合のみ術中PSGを行うか、全身麻酔を考慮するなどの対策をとる必要があることを見出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目標は、PSGを用いたプロポフォール下早期胃・食道癌ESD患者呼吸障害の早期検出の試みであった。研究結果としてPSGはパルスオキシメーターではとらえられなかった呼吸障害を検知し、かつパルスオキシメーターで把握できた呼吸障害においてはPSGの方が早期に検知できた。これよりPSGは、鎮静下胃ESD中の新たな呼吸モニタリングとして有用であることが見いだせた。平成28年度の研究目標は、鎮静下胃ESDを安全に行うために術中呼吸状態悪化の危険因子を明らかにし、ハイリスク群を術前に抽出することを目的とした。研究結果は、SASを有する群では有意に呼吸抑制を来たしやすく、さらにSASの重症度が増すほど呼吸抑制の頻度が高くなる可能性が示唆された。論文掲載に遅れはみられるが、研究結果はおおむね達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の臨床研究で、プロポフォール鎮静下胃ESD患者のPSGより、呼吸障害の頻度や起こり易い状況、更に呼吸障害のレベル(閉塞性・中枢性・混合性)などの特徴を把握できた。今後は、呼吸障害の少ないと報告されている鎮静剤(デクスメデトミジン)における鎮静下呼吸障害を比較し安全な鎮静法を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究結果を論文投稿していたが現時点で採択されていない。掲載料として平成28年度見込んだ分が平成29年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
PSG-1100(日本光電製)のリース代と、結果報告としての投稿料や国内・国外学会時の旅費として使用する。
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