消化管機能性疾患は日常的によく遭遇する疾患である。病態として消化管の運動異常や拡張異常などが想定されている。世界標準の検査は特殊で、日本では普及していない。我々は、複眼内視鏡による3次元計測技術を開発した。本研究の目的はこの技術が消化管の運動および拡張を検出する十分な能力を有するか基礎的な技術検証を行うことである。 1)消化管運動の検出:我々は先行研究にて収縮波の高さをmm単位の精度で検出出来ることを示した。本研究では3次元プリンターおよび電動ステージを用いて、収縮波の消化管内伝達を模倣するドライモデルを作成した。蠕動波を2 mm/sで移動させ複眼内視鏡で観察、移動速度は1.74±0.02 mm/s(誤差13%)と算出された。次に収縮波の上に動物の摘出臓器を乗せて2 mm/sで移動させ複眼内視鏡で観察、移動速度を同様に算出した。ウシ小腸2.01±0.03 mm/s(誤差0.3%)、ブタ食道1.44±0.08 mm/s(誤差28%)、ブタ胃前庭部0.80±0.05 mm/s(誤差60%)であった。測定誤差は測定対象物によって大きく変化したが、測定結果の標準偏差は少ない。今後この原因を検討する。 2)消化管拡張の検出:腸管を円柱と見なしたときの直径、半球と見なしたときの容積を算出した。最初に3次元プリンターで円柱と半球を作成し、複眼内視鏡で観察、直径あるいは容積を算出した。直径20 mmの円柱の直径は19.6 mm(誤差3%)、直径20 mmの半球の容積は1.9 mm3(理論値2.09、誤差9%)と算出された。次に直径7 cmの半球の上にブタ胃底部を乗せ、複眼内視鏡で観察、容積は48.3 mm3(真の値46.8、誤差3%)と算出された。 以上の結果より、複眼内視鏡による3次元計測技術は消化管機能を高精度に測定する可能性が示唆された。
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