研究課題/領域番号 |
15K09064
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 欣夫 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70372357)
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研究分担者 |
長谷川 洋 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50375656)
岡田 将 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50514725)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重症心不全 / 拡張型心筋症 / 左室逆リモデリング / 次世代シーケンサー / 補助人工心臓 / 心筋生検 / RNA sequence |
研究実績の概要 |
拡張型心筋症に代表される非虚血性の重症心不全の症例のうち、一部は適切な心筋保護薬や心臓再同期療法(CRT)、また補助人工心臓による心負荷の軽減などにより、左室逆リモデリングと呼ばれる、心機能の改善を認めることがある。左室逆リモデリングの機序やその予測については詳細には解明されていない。 本研究では、千葉大学医学部附属病院に入院した非虚血性の重症心不全患者から、合計20症例を目標に、経カテーテル的心筋生検あるいは左室補助人工心臓装着手術時に採取される左室心筋組織からRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いたRNA-sequenceにより組織内に発現する遺伝子を定量的に解析する。一方で患者には最大限の内科的治療、外科的治療を行い、左室逆リモデリングと呼ばれる心機能の改善を認めるか否かにより2群に分類する。発現変動遺伝子と左室逆リモデリングの有無との相関関係を解析することにより、左室逆リモデリング予測因子を探索するものである。 今年度で合計20症例の登録が完了した。上記のごとく内科・外科的な集学的治療を行い、心機能の改善について経時的に評価を行っている。20症例中、11例が補助人工心臓装着を行い、1症例は6か月経過前に心臓移植を施行した。9例は心筋生検後内科的治療で退院に至り、それぞれ経過観察中となっている。死亡症例はない。登録完了後、治療を開始し14症例で6か月評価が完了した。左室逆リモデリングを認めた症例は7例であり、ちょうど50%に相当する。一方で心筋サンプルについては順次RNA抽出を行い、次世代シーケンサーによるRNA sequenceの解析を施行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の登録は当初の計画通り今年度で目標の20症例に到達した。登録の状況および治療の状況、また6か月評価については順調であると考える。 次世代シーケンサーを用いた解析については、経カテーテル的心筋生検を行った場合、採取した組織が小さくRNAを十分採取できない症例があった。今後RNA sequenceを予定している一部サンプルについても、RNA濃度が低く、解析が可能かどうか評価する必要がある。解析が困難で除外せざるを得ない場合には、追加で症例登録を行うかどうか検討する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、次世代シーケンサーを用いてRNA sequenceを施行するとともに、登録症例の治療を継続し左室逆リモデリングの評価を行っていく。当初の計画通り、発現変動遺伝子と左室逆リモデリングの可能性について解析し、候補となる因子を同定する。それらの因子について末梢血での発現を併せて解析し, 簡便なバイオマーカーとして使用できるものを探索するとともに、心筋症における心機能低下や左室逆リモデリングの機序の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来平成27年度に予定していた残りの数検体に関してRN-sequenceを行う必要があるため。ただし、1検体あたりの使用額が当初の予定よりも少ない額で済んだことから、追加で検体採取を行うことも検討している。
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次年度使用額の使用計画 |
残りの検体のRNA sequenceを施行するとともに、解析結果に応じて保存血清における解析を行う。RNA sequenceは1検体あたり当初の見込みよりも少ない額で施行することができており、前述のとおり、登録症例を増やすことも検討している。また、研究成果の学会発表および論文化を予定しており、そのための経費として使用する。
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