研究実績の概要 |
経皮的に腎動脈内に挿入した多極電極カテーテルから神経電気刺激を加えると、交感神経緊張が亢進して、体血圧が上昇し、刺激強度を増幅すると心室不整脈が誘発された。これらの反応は腎動脈内に留置したイリゲーション型アブレーションカテーテルから高周波通電を行うことで抑制されたが、治療効果と安全性は通電出力(10W, 15W, 20W, 25W)によって異なった。20Wと25Wによる短時間通電の治療効果はほぼ同等であったが、25Wでは血管造影と組織学的検討で血管損傷が顕著となった。15Wの短時間通電は治療効果が低下する傾向にあったが、血管損傷は軽度に留まった。10Wによる長時間通電は短時間通電(20W)と概ね同等の治療効果であったが、血管損傷の程度は軽度であった。このため有効性と安全性の観点から好ましい方法と思われた。 神経電気刺激による昇圧速脈反応、不整脈誘発反応は腎動脈遠位側でより顕著となる傾向にあった。血管中枢側に高周波アブレーションを行うと通電部位だけでなく、より遠位側からの神経電気刺激でも昇圧速脈反応が減弱して、不整脈は誘発されなくなった。また高周波通電中の昇圧速脈反応は腎自律神経への焼灼効果を反映すると考えられ、通電後の治療効果を推定する指標となる可能性がある。腎自律神経系を介する催不整脈効果は求心性神経興奮が主要な役割を担っており、腎動脈中枢側での高周波アブレーションは薬物療法難治症例(ストーム症例など)では治療オプションになり得ると考えられた。 これらの研究成果は日本循環器学会総会(2018年3月Osaka)、Asian Pacific Heart Rhythm Society (2017年9月Yokohama)で報告した。
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