研究課題/領域番号 |
15K09068
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
和泉 大輔 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (30529699)
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研究分担者 |
佐藤 光希 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (40600044)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗凝固療法 / 生理的凝固阻止因子 / DOAC / NOAC / 血管内皮結合型組織因子経路インヒビター |
研究実績の概要 |
本研究は,DOAC,ワルファリン(VKA)による抗凝固療法における生理的凝固阻止因子の影響を解析し,半減期の短いDOACの薬効機序を明らかにすることを目的としている。 アブレーション治療例の抗凝固療法施行例(17例:リバロキサバン,14例:アピキサバン,9例:ダビガトラン,15例:VKA)と未施行例(18例,対照)を検討し以下について明らかにした。 各DOACは対照と比較してトロンビン産生を抑制していたが,VKAと比較してその程度は小さかった。各DOAC群においてtrough・peak時のトロンビン産生は同等であった。血管侵襲後,トロンビン産生はVKA群で低値であったが,DOAC群では対照群と同等レベルまで増加した。特に,ダビガトラン群では穿刺後のトロンビン産生が大きく,高頻度に可溶性フィブリンモノマー複合体の増加を認めた。血管内皮結合型TFPI濃度はダビガトラン群で低値であった。Protein C/SはVKA群で低値,ダビガトラン群で高値であった。血管侵襲後,各DOAC群・対照群ではProtein Cは減少したが,VKA群では前後で差はなかった。ATはアピキサバン群で高値であり,血管侵襲後,全群で減少した。 DOACは,血管損傷時のトロンビン産生を抑制せず,種々の生理的凝固阻止因子に影響しない,あるいは増加させる。DOAC群では凝固亢進時に生理的凝固阻止因子が対照群と同等に消費されていた。これらの結果は,DOACによる抗凝固療法では,VKAに比べ凝固活性化時における生理的凝固阻止因子の抗凝固作用への寄与が大きいことを示唆している。直接トロンビン阻害薬が血管内皮結合型TFPIを減少させることに対して第Xa因子阻害薬はそれを保持する。この薬効の相異が,直接型トロンビン阻害薬でより血管損傷時のトロンビン産生および凝固亢進反応が維持されることを説明すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,各抗凝固療法の生理的凝固阻止因子への影響と,生理的凝固阻止因子の抗凝固作用への寄与程度を解明し一定の結果を得ている。研究成果については,健全な医療の発展に貢献するため国内外の関連学会(申請者ら,European Society of Cardiology congress,Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Society など)にこれまで成果報告を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
データの最終測定および解析中である。各抗凝固薬の生理的凝固阻止因子と凝固線溶系に与える影響を明らかにし,血栓症発症・出血性合併症発症との関連性についても解析を進め,国際的雑誌への掲載を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究資金の効率的利用と測定の安定のために,症例数をまとめて2017年度に生理的凝固阻止因子の測定・解析することとし試薬の購入を保留したため。
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次年度使用額の使用計画 |
生理的凝固阻止因子の測定・解析を2017年度早期に行い,未使用額はその経費に充てる。
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