研究課題
本課題では,直接型経口抗凝固薬(DOAC),ワルファリン(VKA)による抗凝固療法における生理的凝固阻止因子の影響,半減期の短いDOACの薬効機序ならびに出血減少の機序が検討された。カテーテル手術を受けるDOAC・VKAを服用例と非服用例(対照例)の連続119例が登録された。本研究では,「VKAに比べてDOAC治療では,血管損傷時に正常な止血反応が保たれていること」,「DOAC治療は,ピーク期トラフ期で凝固反応が同等に抑制され、その作用はワルファリンに比べて中等度の抑制であること」が明らかにされた。この結果は,これまで不明であったDOACの出血性副作用を減らす機序の一部を明らかにした重要な結果である。さらに,血管損傷時のトロンビン産生と止血反応は,トロンビン阻害薬服用例で,Xa因子阻害薬やワルファリン服用例より大きいことが明らかにされた。これは,DOACの種類により血管損傷後の出血の程度に違いがあることを示唆する新たな発見である。本研究では,DOACは生理的凝固阻止因子を維持または増加させることで、脳梗塞の予防に関与している可能性があることも明らかにした。トロンビン阻害薬は,プロテインCとプロテインSを増加させ一部のXa因子阻害薬は,アンチトロンビンを増加させる作用がある可能性が見出された。加えて,DOAC服用例では,血管損傷時の凝固反応が起こった際に,これらの生理的凝固阻止因子が作用し,過剰な凝固が抑制されている可能性が見出された。本研究で明らかにされたDOACの抗凝固作用が適切にコントロールされたVKAに比べ比較的弱いという結果は,DOACに血液凝固を抑制する以外の血栓症予防効果がある可能性を示すものである。これは,新たな研究目標であり,この点について明らかになると血栓症予防のみでなく動脈硬化などの他の病気についての新たな治療法の開発に役立つものと考えられる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
J Am Coll Cardiol.
巻: 71 ページ: 102-104
10.1016/j.jacc.2017.10.076.
Europace.
巻: 19 ページ: 2014-2014
10.1093/europace/euw372.
J Electrocardiol.
巻: 50 ページ: 277-281
10.1016/j.jelectrocard.2016.09.005.
新潟医学会雑誌
巻: 131 ページ: 396-401