研究課題/領域番号 |
15K09070
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加藤 武史 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (90456418)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心房細動 / 塞栓症 |
研究実績の概要 |
高頻度心房ペーシングによる心房細動モデルラットにおいて、肝臓の遺伝子発現が変化していることを前年度までに確認した。そこで、平成28年度は心房細動患者の肝臓における遺伝子発現プロファイルを検討した。 当施設で肝生検を行った非アルコール性脂肪性肝炎の症例から、心房細動患者を抽出した。これと年齢、性別、肝臓の病理学的ステージ(Brunt's pathologic criteria)を合わせた患者をコントロール群とした。両群間に左心房径の差は認めなかった。DNAマイクロアレイ法を用いて、心房細動群とコントロール群の肝臓における遺伝子発現を網羅的に比較検討した。54675遺伝子を用いた階層的クラスタリングを行ったところ、心房細動群とコントロール群は明確に分類され、心房細動のヒトにおいても心臓と肝臓が連関していることが示唆された。パスウェイ解析を行ったところ、外因系凝固経路が最も変化しており、その他には補体経路・p53シグナリング経路・DNAダメージに反応したアポトーシス経路などが著明に変化していた。 このように、心房細動モデルラットのみならず、ヒトにおいても心房細動が遠隔臓器である肝臓の遺伝子発現を変化させることを見出した。特に、凝固系の遺伝子が大きく影響を受けており、心房細動における塞栓症発症の一因となっている可能性が考えられる。一方で、近年心房細動における炎症の関与が注目され始めているが、炎症と凝固はその経路において多くの分子を共有している。今後は、心房細動塞栓症における炎症の役割に注目して、検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、ヒトの肝生検サンプルを用いた検討を行った。その結果、心房細動が遠隔臓器である肝臓の遺伝子発現を変化させることを見出した。 その成果を論文化し、Heart Rhythm誌に投稿したところ、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの肝臓において、炎症に関与した遺伝子発現プロファイルが心房細動によってどのように変化するか検討する。また、同様の検討を心房細動モデルラットでも行うことによって、炎症が心房細動の原因であるのか結果であるのかを解明し、凝固系に及ぼす影響も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
心房細動患者における末梢血遺伝子発現プロファイルの検討に要する機材の購入を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
心房細動患者の肝臓における炎症系の遺伝子発現プロファイルを検討するため、cDNAマイクロアレイチップを購入する。
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