研究課題/領域番号 |
15K09071
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊澤 淳 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (50464095)
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研究分担者 |
池田 宇一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30221063)
本郷 実 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (40209317) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域保健 / 特定健診 / 血圧 / 脂質 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
【目的】地域保健医療のビッグデータを活用し,長寿の要因と心血管疾患リスク因子を明らかにして地域保健の推進に貢献することを目的とする。 【方法】信州大学医学部は長野県松川村と地域保健・健康増進のため連携協定を締結している。本研究の初年度の研究計画として,平成27年5月に実施された特定健診のデータを活用し,生活習慣や背景を一般的な疫学データと比較検討することにより長寿の要因を解析することとした。 【結果】メタボリック症候群と診断された例は松川村で11.4%(全国データは15.2%),予備群は9.6%(同15.4%)であり,いずれも松川村では低い傾向を示した。さらに血圧,脂質,血糖について管理良好と判定する基準を,診察室血圧:< 140/90 mmHg (若年・中年・前期高齢者),< 150/90 mmHg(後期高齢者);脂質:中性脂肪 < 150 mg/dL,LDLコレステロール < 140 mg/dLおよびHDLコレステロール > 40 mg/dL;血糖:ヘモグロビンA1c値 < 7.0%と定めて解析した。その結果,松川村ではこれらの基準を満たす管理良好な例が,それぞれ70.3%, 73.6%, 66.0%であった。全国データでは60歳以上の高血圧管理率:男29.9%,女40.9%,脂質の管理目標達成率67.8%,また血糖の管理良好は52.5%,57.3%と報告されていることから,いずれも松川村の管理良好な割合が上回っていた。 【結語】松川村の健康長寿の要因として,心血管疾患の危険因子が良好にコントロールされていることの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
信州大学医学部と長野県松川村による地域連携協定に従って実施された先行研究をまとめ,論文発表した(Harada M, Izawa A et al. J Cardiol, 2016, in press)。 平成27年度は,研究計画「(1) 長寿者の生活習慣や背景を解析して長寿の要因を解析する」について,長野県松川村の特定検診データおよび生活習慣病の調査等を活用し,以下の進捗が得られた。 松川村の特定健診データ(平成27年5月実施)を集計し,全国データ(平成25年国民健康・栄養調査等)と比較検討した。メタボリック症候群と診断された割合は松川村で11.4%(全国データは15.2%),予備群は9.6%(同15.4%),そして体格指数(BMI)25以上の肥満者は松川村で18.4%(同23.5%)であった。さらに血圧,脂質,血糖について管理良好とする基準を,診察室血圧:< 140/90 mmHg (若年・中年・前期高齢者),< 150/90 mmHg(後期高齢者);脂質:中性脂肪 < 150 mg/dL,LDLコレステロール < 140 mg/dLおよびHDLコレステロール > 40 mg/dL;血糖:ヘモグロビンA1c値 < 7.0%と定めた。これらの基準を満たす例は,松川村ではそれぞれ70.3%, 73.6%, 66.0%であった。全国データでは60歳以上の高血圧管理率:男29.9%,女40.9%(厚生労働省平成24年度報告書),脂質の管理目標達成率67.8%,また血糖の管理良好は52.5%(2014年度QIプロジェクト結果報告:日本病院会),57.3%(2013年度基礎集計資料:糖尿病データマネジメント研究会)とされている。 以上より,松川村の健康長寿の要因の1つとして,肥満やメタボリック症候群が少なく,複数の生活習慣病のコントロールが良好であることが重要であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
心血管疾患と関連する要因を網羅的に解析し,心血管疾患の早期診断・発症予防を目指すため,調査地域を本学が所在する長野県松本市に拡大する。 近年の医歯学および疫学研究により,歯周病と口腔嚥下機能は,心血管疾患および身体活動能力とそれぞれ密接に関連することが示唆されている。しかしながら健診データを活用した大規模調査や予防医療に活用する取り組みは少ないため,本研究の今後の方策として,歯科口腔健診データおよび医科診療報酬明細(レセプト)等のビッグデータを統合し,効果的な医科歯科連携を構築し,健康寿命を損なう心血管疾患の発症や要介護に至る危険因子の探索を以下の方法によって推進する予定である。 1. 歯周病検診データ(齲歯および歯周病の重症度等)と医科レセプトデータの結び付け。2. 身体活動機能と筋力評価,体組成計によりサルコペニアおよびフレイルの評価,介護度を調査。3. 重度の歯周病および歯周病を契機に発見された生活習慣病の重積例を高リスクと考え,血中脂肪酸分画の測定を含むバイオマーカーを測定。4. 後方視的研究により脳・心血管疾患および介護レベルを規定するリスク因子を探索し,健康長寿者と比較検討する。5. 以上の医科歯科連携による地域予防医療の展開が,健康寿命の延伸に有益であるか前方視的に評価を継続する。 上記方策を推進するため,松本市歯科医師会および松本市医師会のご協力をいただき,研究会「医科歯科連携による先進予防医療研究会・松本(Dental and Medical Collaboration for the Advanced Medical Prevention in Matsumoto: D-CAMP Matsumoto)」が組織され活動を展開している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも安価で研究が遂行できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と平成28年度経費は脂肪酸分画測定費用およびバイオマーカ(サイトカイン等)測定キットの購入にあてる。
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