研究実績の概要 |
前所属の名古屋大学の肺高血圧先端医療学寄附講座で右心不全の代表的疾患である肺動脈性肺高血圧症(PAH)に関して、運動耐容能に基づく治療戦略を多施設共同試験として、前向きに臨床観察研究を行った。2016年4月に国立長寿医療研究センターに転勤となったが、客員研究生として引き続き連絡をとった。 2017年度の研究業績として、新規に診断したPAH42例に、心肺運動負荷試験(CPX)を用いて治療効果判定を行い、目標設定型の肺動脈拡張薬の逐次追加併用療法(sequential combination therapy)を行い、治療効果を検討していく研究を報告した。その結果、6ヵ月後に79%、12ヵ月後に82%にsequential combination therapyが行われた。CPXを用いた運動耐容能の指標は、PeakVO2, VE/VCO2slopeとも治療開始6ヶ月~12ヶ月において有意に改善した。新たな指標として、peakVO2とpeak時の収縮期血圧の積であるcirculatory power, peak時の収縮期血圧をVE/VCO2slopeで除したventilatory powerを評価した。他の運動耐容能の指標より、Ventilatory powerは治療効果判定を鋭敏に捉えた。CPXを指標とする積極的なsequential combination therapyは、治療戦略として有用であることが示唆された。(Hirashiki, et al. Pulm Circ. 2017) 2018年度の研究実績として、新規に診断したPAHに対し、治療介入における精神的およびQOLの改善に関して治療反応の経時的変化を示した報告を投稿し、revisedとなり再投稿した。主たる研究である肺高血圧の多施設前向き研究は、現在投稿中である。
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