研究課題
心房中隔欠損症患者の血清中の水溶性代謝物プロファイルをガスクロマトグラフィー質量分析計により検討したところ、2-アミノ酪酸(2AB)およびケトン体のひとつであるbetaOHBがともに上昇しており、一方で閉鎖術により健常人レベルまで低下することを確認した。引き続き両者の心不全における代謝制御機構ならびに生理学的意義を検討した。2-ABはグルタチオンのホメオスタシス維持を反映しており、心臓における酸化ストレスを鋭敏に捉えうるマーカーとしての可能性を秘めていることをドキソルビシン心筋症モデルマウスを用いた検討で明らかにした。betaOHBは心不全で上昇することがすでに報告されているが、その機序としてこれまでは交感神経の活性化に伴う脂肪分解の結果、肝臓でのケトン体合成が亢進するためと考えられていた。我々は必ずしも肝臓でのケトン合成が亢進していなくても、不全心ではケトン体の肝外利用に重要な酵素であるSCOTの発現が低下するために濃度上昇をきたしうることを明らかにした。さらにbetaOHBは酸化ストレスに対し心筋保護的に作用し、不全心におけるbetaOHBの蓄積は代償性反応である可能性が示唆された。一方で末期心不全ではbetaOHBを代替エネルギーとして利用する経路が活性化し、ATP産生源として重要な役割を果たすとの報告も近年、なされている。病態の重症度に応じ不全心におけるbetaOHBの役割が抗酸化作用または代替エネルギーのどちらかにウェイトがシフトする可能性について今後、さらに検討を予定している。
2: おおむね順調に進展している
心不全における代謝制御機構の解明という目的に対し一定の成果をあげている。またその病態生理学的意義についても明らかにしてきており、心不全に対する新たな診断法や治療法の構築へとつながることが期待される。
これまでに明らかにした心不全における代謝制御機構より新たな心不全治療の構築を模索するとともに、心不全の発症・超早期予知に有用な指標となりうるか臨床での検討を予定している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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