3ヶ月以内の死亡やメカニカルサポートを要するような治療抵抗性心不全を1次エンドポイントとして、トルバプタン投与前後の患者背景、血液生化学データ、尿生化学所見、心エコー所見等の種々のパラメータ比較を行った。 その結果、我が国での心不全レジストリであるATTEND研究と比較して、若年(60.5 vs. 73歳)、糖尿病合併率低値(10.5% vs. 34%) 、高血圧合併率低値(26.3 vs. 71%)等、いくつかの指標について、有意な差を有する集団であることが分かった。このような集団での検討で、投与前後でのK排泄率(FEK)高値や変化率、変化量高値が、その後の死亡を含む1次エンドポイントに有意に相関すること が分かった。トルバプタンは利尿薬の中ではK排泄に唯一関与しないものであることから、 FEKは腎血流量低下とそれに引き続きレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系活性化に影響を受けていると考えられる。実際、症例として実測できた症例は限られているものの、血漿アルドステロン濃度や血清レニン活性値とFEKが相関することも判明した。 一般的にトルバプタンはNa利尿薬と比較し、血管内脱水を来しにくい薬剤であるとされているものの、利尿薬であることに変わりは無く、過度の除水が血管内脱水とそれに引き続く心拍出量低下やそれに引き続くRAS活性化を促し、結果として心不全の予後を悪化させ ているという可能性を指摘することができた。 血管内脱水や血清Na値上昇が、投与前のFEKから予測できることも判明し、投与量の調整に有用な指標であることが推察された。以上について、現在論文を作成中である。
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