研究課題/領域番号 |
15K09087
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古賀 聖士 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00398158)
|
研究分担者 |
池田 聡司 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (10336159)
前村 浩二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90282649)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 石灰化 / 冠動脈疾患 / 動脈硬化 / 血管内イメージング / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
α-klotho遺伝子は、血管石灰化などのヒトの多彩な老化症状によく似た表現型を有する遺伝子変異マウスの責任遺伝子として同定され、抗老化遺伝子として報告された。本研究の目的は、循環血中の可溶型α-Klotho値の冠動脈疾患患者における臨床的意義を解明することである。 今年度は、血清α-Klotho値と冠動脈プラーク内の石灰化をはじめとした組織性状との関連に関して検討を進めた。具体的には、冠動脈責任病変に対して経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を行った54人の安定狭心症患者 (末期腎不全のため透析中の患者は除外) を対象に、血清α-Klotho値と冠動脈プラークの組織性状の関連を検討した。血清α-Klotho値は、PCI施行前に採取した末梢静脈血から測定した。冠動脈プラークの組織性状は、血管内超音波から得られた高周波信号のスペクトラム解析により定量化した。冠動脈プラーク内の石灰沈着の指標として、calcium index (CalcIndex)と%calcified tissue volume (%CV) を用いた。 結果、54人全体の解析では、血清α-Klotho値と冠動脈プラーク組織性状に有意な関連を認めなかった。一方、eGFRが60 mL/min/1.73 m2未満の慢性腎臓病 (CKD) 患者21人のみで解析すると、血清α-Klotho値はCalcIndex (r = -0.56, p = 0.009)および%CV (r = -0.48, p = 0.027)と有意な逆相関を示した。年齢、性別、高血圧、脂質異常症、糖尿病、eGFR、BMIなどの交絡因子を補正しても、血清α-Klotho値はCalcIndexおよび%CVの独立した予測因子であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の具体的な検討項目は、(1) 血清α-Klotho値と冠動脈プラークの石灰化をはじめとした組織性状との関連の解明、(2) 血清α-Klotho値へ影響を与える患者の背景因子や基礎疾患の同定、(3) 動脈硬化・石灰化と関連する他の血液マーカーと比較し、血清α-Klotho値の優位性の証明、の3項目である。この3項目のうち、今年度までに(1) の項目まで検討が進んでいるが、(2)、(3)の項目は検討が遅れている。(2)に関しては、冠動脈硬化および冠動脈石灰化に関与する因子は非常に多彩であり、背景因子の調整が非常に難しい点が問題である。また、(3)に関しては、当初血清FGF23との比較を検討していたが、血清α-Klothoと同様に腎機能の影響を非常に強く受けるため、今後は腎機能や末期腎不全、透析患者の扱いが難しく、検討に時間を要している。 その他の問題点として、冠勤脈疾患の異なる病態間、すなわち安定型狭心症、急性心筋梗塞、不安定狭心症、陳旧性心筋梗塞、冠攣縮性狭心症などの異なる病態間における血清α-Klotho値を測定し比較する予定であったが、現段階では主に安定狭心症患者しか登録できてない。また、非冠動脈疾患患者における血清α-Klotho値の変動も評価する必要がある。 以上から、現在までの達成度を「(3)やや遅れている」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
非冠勤脈疾患患者の患者登録が遅れている点に関しては、当施設で冠勤脈造影検査を行った患者のうち、冠勤脈病変を認めなかった患者(心筋症患者、不整脈患者など)にも、積極的に本研究への参加を呼びかけていく。 安定狭心症以外の冠動脈疾患患者(急性冠症候群など)の登録が遅れている点に関しては、急性冠症候群の患者さんでは、全身状態が不安定な症例も多く、本研究への参加同意取得ができていない場合があり、今後も患者登録が進まない可能性がある。そこで、今後の進行状況によっては当施設の関連病院に患者登録の協力を依頼する予定である。 冠動脈硬化、石灰化のリスク因子や腎機能などの患者背景の調整が必要な点に関しては、統計解析の手法に工夫を要する可能性があり、当施設の臨床研究センターの統計専門家にコンサルトを行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の助成金使用用途は、血液保存検体から各種バイオマーカーを測定する外注費用に主に使用した。しかし、外注検査を予定していたものの、血液検体の保存状態の問題で実際には測定できなかった検体もあり、そのため平成28年度の助成金が9,183円残った。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度も主に血液保存検体から各種バイオマーカーを測定する外注費用に助成金を使用する予定である。加えて、血管内イメー ジング専用カテーテルの購入、学会・研究会へ参加する旅費にも使用する予定である
|