研究課題/領域番号 |
15K09089
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
海北 幸一 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30346978)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血栓形成能評価システム / 抗血栓療法 / 冠動脈疾患 / 心房細動 / 新規経口抗凝固薬 |
研究実績の概要 |
冠動脈疾患患者については、順調に症例を蓄積できている。また、心房細動に対する高周波カテーテルアブレ-ション施行例も症例の蓄積が順調に進んでいる。前年度の冠動脈疾患に関する報告に加えて、平成28年度では、T-TASによる血小板血栓形成能と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)周術期の出血性合併症の関連性について検討している。2013年から2016年までに当施設で抗血小板薬2剤(アスピリン+クロピドグレルまたはプラスグレル)内服下に待機的PCIを行った連続313例を対象とした。PCI施行前に大腿静脈のシースより採血し、T-TASによる血小板血栓形成能を評価した。T-TAS値は、T-TAS機器内のマイクロチップ(PLチップ)内に全血を一定流速で10分間流した時のチップ内の時間-圧曲線下面積(PL24-AUC10)を算出して定量評価した。周術期出血性合併症は国際血栓止血学会(ISTH)の基準に従い評価した。PCI周術期出血性合併症は313例中37例に認めた(大出血12例、小出血25例)。周術期出血群では非出血群に比し有意にPL24-AUC10が低値であった(p=0.002)。多変量解析では、複数のモデル解析において、いずれもPL24-AUC10低値群が独立した出血性合併症の予測因子であった。鼠径穿刺を行った176例の解析では26例に周術期出血性合併症を認め、同様にPL24-AUC10低値群が独立した出血性合併症の予測因子となった。T-TASは、抗血小板併用療法施行例における待機的PCI後の周術期出血性合併症の予測に有用であることが示唆され、以上の結果を報告した。(Oimatsu Y, Kaikita K, et al. J Am Heart Assoc. 6:e005263, 2017.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は単一施設での検討であるため、登録自体はスムーズに進んだ。また、T-TAS測定は3年前から継続的に施行しており、採血から測定までの行程が既に確立している。また、その他の血小板機能検査(VerifyNow System)の測定系も確立しており、凝固機能検査であるPT, APTT, TAT, D-dimerに関しては保険診療の範囲内で施行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 前年度に引き続き、今後も積極的なスクリーニングを実施し、適合症例の獲得に努力する。冠動脈疾患に関しては、今回得られたPL-AUC値がその後の心血管イベントや出血性合併症に相関するか否かを検討する予定である。心血管イベントおよび出血性合併症は入院中、1ヶ月後、3ヶ月後、6-9ヶ月後、1年後に評価し、全死亡、心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全増悪、入院を要する不安定狭心症、予定しない再血行再建、脳梗塞及びその他の血栓塞栓症を調査する。 2. アブレ―ションを施行した心房細動例においても、積極的なスクリーニングを実施し、適合症例の獲得に努力する。アブレ―ション3ヶ月後、6ヶ月後の心房細動再発率、出血性合併症とAR-AUC値の関連性を評価する予定である。また、アブレ―ション3日後のAR-AUC値と薬物血中濃度との相関性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究は概ね順調に計画が進行しているが、一部の症例において未だ凝固マーカーの測定が完了していない検体等があること、および更なる新知見の検討のため症例の登録が必要であることが、次年度使用額が生じた理由である。平成29年度に合わせて使用していく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究費に加えて使用していく。今後も積極的なスクリーニングを実施し、適合症例の獲得に努力する。冠動脈疾患に関しては、平成28年度にT-TAS値とPCI周術期出血性合併症との関連性を報告したが、本年度は、T-TAS値がPCI後の心血管イベントや内因性出血性合併症に相関するか否かを検討する予定である。 アブレ―ションを施行した心房細動例においても、積極的なスクリーニングを実施し、適合症例の獲得に努力する。また、アブレ―ション3ヶ月後、6ヶ月後の心房細動再発率、出血性合併症とAR-AUC値の関連性を評価する予定である。また、アブレ―ション3日後のAR-AUC値と薬物血中濃度との相関性を評価する。
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