研究課題
心筋虚血指標として拡張期冠動脈内圧-血流関係に基づいて考案された冠動脈心筋血流予備量比(FFRmyo)の計測は、日常臨床においては平均冠動脈内圧を用いており、拡張期冠動脈内圧のみならず収縮期冠動脈内圧を含めた形で計測されている。しかし、現在では進歩したコンピューターソフトウエアを応用することにより「拡張期のFFRmyo:d-FFR」を計測することは容易であり、FFRmyoより精度の良い心筋虚血の指標とすることができる可能性があり、川崎医科大学医用工学科と共同開発してきた、d-FFR計測ソフトウエアを用いて心筋虚血の診断の精度の向上を検討するために、引き続き以下の手順で今年度の研究を実施した。①拡張期心筋血流予備量比(d-FFR)の基本ソフトウエアの精度をさらに向上させるため、昨年同様に自施設の日常臨床例で記録した冠内圧記録・心筋血流予備量比(FFRmyo)記録を用いて後方視的にd-FFR計測精度を追加検討した。さらにFFRmyoの記録の良好なものと不良なものを比較し、大動脈切痕(dicrotic notch)が明確で、冠内圧記録・FFRmyo記録が安定して記録されている波形ではd-FFRの計測の精度が高いことを再確認し、2-3拍の記録で判定可能になるようにさらに精度向上を図った。②従来のFFRmyoとd-FFRおよび心筋シンチグラフィーとの比較症例数を増やして解析検討中である。また、自施設の倫理委員会で承認を得て、心筋シンチをゴールドスタンダードとしてd-FFR・FFRmyoの診断精度を研究する医師主導型の多施設共同研究を推進し、450例の登録予定のうち380例の登録が終了しており今年度中に登録終了予定である。
3: やや遅れている
①昨年と同様に自施設症例の冠内圧記録・心筋血流予備量比(FFRmyo)記録を用いて後方視的に拡張期心筋血流予備量比(d-FFR)計測精度の追加検討を行い、大動脈切痕(dicrotic notch)が明確な冠内圧記録・FFRmyo記録が安定して2-3拍記録できれば精度よくd-FFRの計測が可能となるよう改善を加えたため、d-FFR計測のソフトウエアの精度を向上するのに時間を要した。②従来のFFRmyoとd-FFRおおよび心筋シンチグラフィーとの比較例を追加検討しているが、解析に時間を要する。③自施設の倫理委員会で承認を得て、心筋シンチをゴールドスタンダードとしてd-FFR・FFRmyoの診断精度を研究する医師主導型の多施設共同研究を推進し、昨年より130例余りの追加登録ができ現在380例余りの登録が終了し、コアラボ解析を同時に進めているが予定の450症例の登録に時間を要している。
①自施設例におけるFFRmyoとd-FFRおおよび心筋シンチグラフィーとの比較検討を解析し、心筋シンチをゴールドスタンダードとしてd-FFR・FFRmyoの診断精度を算出し、研究会・学会などで報告する。②医師主導型の多施設共同研究をさらに推進し、450症例(残り70例)を目標に登録を進め、コアラボ解析を継続すると同時にプロトコール論文を投稿し、サブ解析として冠動脈の枝(左前下行枝・回旋枝・右冠動脈)ごとの検討や左主幹部冠動脈狭窄のある症例などでのd-FFRの有用性などに関して詳細に検討を進める。③これらのデータをもとに冠動脈インターベンションdefer症例の長期予後の検討や冠動脈インターベンション施行例の予後予測が可能かどうかをFFRmyoとd-FFRで比較検討する。
拡張期心筋血流予備量比(d-FFR)計測のソフトウエアの精度向上に時間を要したことで、圧ワイヤーの購入や解析のためのパソコン購入が遅れた。多施設協同研究の進行が予定より遅く、コアラボ解析や解析ソフト購入などの使用額が予定より少なくなった。現在、d-FFR計測ソフトウエアの完成のための最終実験を予定しており、多施設協同研究の登録が終了すればコアラボ解析などに費用が発生し、本研究費を当該予算として使用予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Circ J
巻: 82 ページ: 807-814
10.1253/circj.CJ-17-0949
Eur Heart J
巻: 39 ページ: 945-951
10.1093/eurheartj/ehx458
J Am Coll Cardiol Cardiovasc Interv
巻: 11 ページ: 237-245
10.1016/j.jcin.2017.09.009
巻: 81 ページ: 1301-1306
10.1253/circj.CJ-16-1213.
巻: 81 ページ: 1085-1093
10.1253/circj.CJ-16-0503.