研究課題
研究初年度には主に基礎研究を実施した。臨床的に広く活用可能な非バイオアッセイによるバイオマーカーの確立を目的として、複数の自己抗原に対してELISAによる測定を同時測定した。自己抗原種は、ミオシン、β1アドレナリン受容体、M2ムスカリン受容体、細胞膜Na-K-ATPase、ならびに心筋トロポニンIを予定したが、自己抗体IgG3サブタイプを含めた測定は初年度にはβ1アドレナリン受容体抗体のみ完了した。臨床サンプルは2016年3月末までの先進医療B被験者のべ25名中、初期17例であった。IgG全サブクラスのELISA測定結果5種の吸光度測定値を対数化としたものの総和を計算した。全部17例で同スコアが高いものと低いものの2群にわけて、バイオアッセイによって測定した心抑制性抗心筋自己抗体の有無を比較した。心不全アフェレシス治療を行う前の先進医療B開始時のサンプルにおいては、ELISAスコア高値群の方がスコア低値群よりも、心抑制性抗心筋自己抗体価が上昇する傾向が認められたが、全17例で心抑制性抗心筋自己抗体は陽性であった。特に同抗体価が10以上と高力価の症例は17例中3例で、これらはいづれもELISAスコア高値群であったが、自己抗原種には一定の傾向は認めなかった。また心抑制性抗心筋自己抗体は採血後すみやかに実施したため、全症例において測定日はことなり、全症例を同時にバイオアッセイする必要性も新たに想定されたため、次年度に改めて一括測定する予定である。同時に血液サンプル保存による自己抗体測定に対する安定性ならびにデータ再現性も検証する。現時点ではデータ非公開ではあるが、アフェレシスにともなって血中カルニチン濃度の動態がことなる症例が約6割存在し、同症例では未報告の自己抗体が存在する可能性が示唆されたため、ドットプロット法にて同自己抗原の同定を進行している。
2: おおむね順調に進展している
すでに心筋に対する自己抗体の測定については研究者施設で確立しており、測定対象となる臨床検体も文書同意の上で集積しつつあるため
順調に経過している基礎研究にくわえて、先進医療Bとして被験者登録が2016年3月末に満了となった臨床研究についても解析をおこなっていく
(1)外国へ発注した試薬において、注文後供給であったため、発注商品量が年度内に日本国に到着しなかったため。(2)データ信頼度を高めるため、臨床検体を同時測定する必要が次年度に生じたため。
(1)入手された試薬にて実施できる実験は着手できたが次年度にも実験継続の予定。(2)個別に採血後に測定を行っているものの、集積検体を一括して再検査する試薬費用は次年度にまわした。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J Clin Apher.
巻: 31 ページ: 141-150
10.1002/jca.21446
Bone Marrow Transplant.
巻: 50 ページ: 870-872
doi: 10.1038/bmt.2015.40
https://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/section/shinryo/circulation/disease/immunoadsorption.html