最終年度には基礎研究を完遂した。血液サンプルは2017年9月末まで実施された先進医療Bの全被験者25名分を使用した。複数の自己抗原種に対してELISAによる同時測定を行った。抗ヒト免疫グロブリンG抗体のサブクラスは、全サブクラスならびにサブクラス3特異的の2種とした。自己抗原5種は、ミオシン、β1アドレナリン受容体、M2ムスカリン受容体、細胞膜Na-K-ATPase、ならびに心筋トロポニンIとした。そのうえで抗原5種のELISA結果(吸光度)を対数化としたものの総和を計算した。スコアの算出方法は、本邦多施設治験と同一とした。算出スコアを中央値で2群比較することで、先進医療Bの治療成績を解析した。本邦治験結果と同様に、高スコア群では低スコア群と比較して、心エコー図検査で測定した左室駆出率が有意に増加した。自己抗原5種それぞれの解析では、全サブクラスでもサブクラス3特異的でも、有意な変化は観察されなかった。また上記全サンプルを対象とし、鶏有精卵を用いたバイオアッセイによって心抑制性抗心筋自己抗体を、あらためて一括測定した。その陽性定義は抗体価5以上であったが、抗体価10以上の症例ではいずれも、心臓核医学検査で測定した左室駆出率が有意に増加を示した。上記いずれの自己抗体測定結果も昨年度までの測定値と有意差は認められず、あらためて血液サンプル保存による自己抗体測定に対する安定性ならびにデータ再現性が検証された。最後に新規自己抗原カルニチントランスポーターOCTN2に対する追加解析から、免疫吸着療法とカルニチン補充の2手法により難治性心疾患が完治する可能性が示唆された。
|