研究課題
本研究では、移植に際し高純度のiPS由来心筋細胞が大量に必要となるため、その培養、純化精製システムの構築が重要な課題であった。これに関しては、無糖乳酸培地を用いることによって未分化幹細胞や非心筋細胞を除去することが可能となり、純度の高い心筋細胞を精製することに成功した。さらに、この無糖乳酸添加培地を用いた心筋細胞純化法を、スピナーフラスコ、バイオリアクターを用いた回転浮遊培養の系に応用し、大量培養システムによって、大量の心筋細胞を分化誘導することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
移植に際して、iPS由来心筋細胞を大量に培養し、純化精製するシステムの構築に成功したことで、より現実の移植医療に近い環境での実験がスムーズに行えるようになったことを評価している。一方、マイクロゲルの作製については、光パターニング法では球形の形態を作製することが困難であった。また、培養細胞が培養皿に接着せず浮遊してしまうなどの問題点も明らかとなった。さらに、研究初期の段階であり、研究成果に関する論文や発表が少ない状況であった。
光パターニング法以外にもコラーゲンモールディング法など他の効率的なマイクロゲル作製方法を検討し、至適サイズ(150~200μm)の立体ゲルを作製する予定である。その後、iPS由来の心筋細胞や内皮細胞を充填し、血管ネットワークを有する心筋塊を作製することを予定している。培養皿コーティングに関しても、効率的に培養細胞が接着する条件を検討する。iPS由来心筋細胞に関しては、凍結保存、解凍培養が可能な条件を見出したため、研究室間の輸送が可能となり研究の進捗促進につながるものと期待している。
マイクロゲルの作製については、本格的なプロトコールに到達していないため、研究計画の予定よりも少ない金額で研究を行うことになった。それに伴い、消耗品(試薬や培養プレート、抗体等)の購入も少なかった。
iPS由来心筋細胞の凍結保存、解凍培養が可能となったため、今後、研究の進展が見込まれ、目的とするマイクロゲルの作製に関する検討が本格的に進み、消耗品の購入も多くなることが想定される。また、学会発表のための参加費や論文発表のための英文校正費等に使用にも予定である。
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PLoS One
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