研究課題
本研究では、細胞移植に際し高純度のiPS由来心筋細胞が大量に必要となるため、その培養、純化精製システムの構築が重要な課題であった。また、腫瘍化のリスクを克服するために、未分化幹細胞や心筋以外の細胞の代謝特性と心筋細胞の代謝特性を詳細に解析することで、培養液を変えるだけで心筋細胞を純化精製する技術を確立してきた。さらに、心筋細胞の量産化に関しても、2次元系あるいは3次元系の大量培養技術を確立し、移植に必要な数億個の心筋細胞を一度に作製することを可能とした。そして、この細胞の凍結保存、解凍培養が可能な条件を見出したため、研究室間の細胞輸送が可能となり、研究の進捗促進に繋がった。また、スフェロイドの作製については、当初、光パターニング法、コラーゲンモールディング法を検討してきたが、培養細胞が培養皿に接着せず浮遊してしまうなどの問題点も明らかとなり進捗が得られなかったが、酸素透過性のポリジメチルシロキサン(poly-dimethylsiloxane; PDMS)膜を底面 とする培養器(PDMS培養器)を用いることによって、ある程度の大きさ(100~300μm)のマイクロゲルでも拍動する成果が得られた。そして、酸素透過性のPDMS膜を底面とする培養器を用いて作製した細胞の解析では、成熟化マーカーであるmyosin light chain (MLY2)が高い傾向にあり、心筋細胞が成熟化傾向にあった。一方、酸素透過しない従来の培養器では、低酸素誘導因子(HIF: Hypoxia-Inducible Factor)のtarget遺伝子発現が高い傾向が確認された。以上の成果より、心筋移植により適した心筋塊(スフェロイド)の作製が可能となった。
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Stem Cell Reports.
巻: 9 ページ: 1406-1414
10.1016/j.stemcr.2017.08.025.