研究課題/領域番号 |
15K09101
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋 昭和大学, 医学部, 教授 (90266106)
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研究分担者 |
明石 嘉浩 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40350615)
阿古 潤哉 北里大学, 医学部, 教授 (60292744)
伊苅 裕二 東海大学, 医学部, 教授 (70271567)
佐藤 直樹 日本医科大学, 医学部, 教授 (70291721)
木村 一雄 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 教授 (90214866)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急性心筋梗塞 / レジストリー / 循環器救急疾患 |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞 (AMI)は、カテーテル治療(PCI)の発達とCCU管理の充実にともない、急性期死亡率は10%以下になったもののそれ以上の改善はみられていない。欧米ではNational Registryが稼働し多くの有用なデータを発表しているが、本邦では県単位のレジストリーでさえ少なく、ガイドラインも欧米のデータを基に作成されている。そこで、神奈川県全体を網羅する神奈川循環器救急レジストリーにおいて循環器救急疾患の全体像を把握し、特にこれまでデータが少ない心肺停止例を含む重症心筋梗塞の詳細な実態を明らかにし治療成績向上に寄与することを目的とする。 2015.10月から2017.3月までで約2100例の症例が登録された。平均年齢は68歳で男性が76%を占めていた。患者背景として高血圧が65%、糖尿病が33%、脂質異常症が55%、現在の喫煙が32%、過去の喫煙が28%であった。Killip分類ではⅠが73%、Ⅱが11%、Ⅲが3.7%、Ⅳが5.6%であった。ST上昇型心筋梗塞が75%、非ST上昇型が25%であり、前壁梗塞が46%、下壁梗塞が33%、側壁梗塞が11%であり、陳旧性心筋梗塞が9.8%含まれていた。受診形態では、救急車直接搬送が58%、他院からの転院搬送が21%、直接来院が19%、院内発症が2%であった。Onset to Door timeは平均107分で転院搬送群が有意に長かった。Door to Device timeは平均78分で直接来院群で有意に長かった。また、病院前12誘導心電図の記録の有無では、記録群がDoor to Cathlab timeやFirst medical contact to Door timeが有意に短かった。院内転帰は全体では死亡率が8.4%であるが、来院時心肺停止症例を除くと5.6%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年10月から上記のデータシートを用いてweb登録を開始した。神奈川県における救命救急センター施設(3次救急指定病院)18施設中17施設と、日本循環器学会専門医研修施設36施設の合計53施設が初期より参加した。神奈川県にある大学病院本院4病院と分院8病院すべてが参加した。平成29年3月現在、2100症例のAMIが登録されており、院内予後の解析を開始している。 おおむね予定通りに進行しているものの、参加施設が予定よりやや少ないため、さらに説明会を開催する予定である。また、参加施設登録はされているものの症例登録がすすまない施設もありCRC(Clinical Research Coordinator)導入によるデータシート入力補助業務を検討している。神奈川県にも働きかけを行い本レジストリー研究の重要性の認識を共有し本事業への支援を要請した。一方、神奈川県民への啓蒙活動のため市民公開講座の開催を企画している。本研究の結果の一部は、平成28年日本冠疾患学会、平成29年日本循環器学会で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の予定 平成28年度と同様に、各年度のデータ解析を行い、Onset to Door timeを明らかにし、重症例における予後改善の方策を検討する。さらに参加施設を神奈川県の日本循環器学会研修施設で未だに本レジストリーに不参加の施設に参加を依頼する。一方、Onset to Door timeの改善には一般市民に対する心筋梗塞等の循環器救急疾患に対する啓蒙活動を行う必要があり、神奈川県の各エリアにおいて主任研究者、分担研究者が中心となり市民公開講座を開催する。平成29年度で基本的な入力項目は確定し、毎年のデータ解析を行い経年変化の解析も行い年次推移を明らかにする。 研究の結果の一部は、平成28年日本冠疾患学会、平成29年日本循環器学会で発表を行った。 また、他のレジストリー関係の学会に報告を行い神奈川循環器救急レジストリーと、東京CCUネットワーク、宮城県心筋梗塞対策協議会、熊本急性冠症候群研究会のデータの比較を行い、地域差を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各地域での説明会の頻度が少なかったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)各地域での説明会を行い、不参加施設への本レジストリーへの参加を促す。 (2)各地域市民公開講座を開催する。
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