研究課題/領域番号 |
15K09104
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
奥村 恭男 日本大学, 医学部, 准教授 (20624159)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタボリック症候群 / 凝固線溶系因子 / 心房筋リモデリング |
研究実績の概要 |
メタボリック症候群は、心房細動(AF)の進行に寄与するだけでなく、AFの合併症である脳塞栓症のリスクを上昇させる。しかし、メタボリック症候群により促進される心房筋の電気的、構造的リモデリングや、脳塞栓症の発症の素地となる血栓形成の正確なメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、メタボリック症候群イヌの持続性AFモデルを作成し、メタボリック症候群によって促進された心房筋の構造的リモデリングの機序と脳塞栓症を引き起こす左心房血栓形成の機序を解明するために動物実験および臨床研究を行っている。ビーグル犬15頭を対象に高カロリー食を給与し、高頻度ペースメーカー刺激を行う群 (MeS-AF群:5頭)、通常食に高頻度ペースメーカー刺激を行う群 (AF群5頭)、通常食を与える対照群(5頭)に分ける。MeS群及びAF群は16週齢にペースメーカー植込みを行い、4週間高頻度心房ペーシングを行う。20週齢に、電気生理学的検査を行う。現在、MeS-AF群2頭、AF群、対照群それぞれ1頭、合計4頭終了している。電気生理学的検査では、MeS-AF群、AF群は対照群に比較し、心房及び肺静脈の不応期は短く(103 ms, 63 ms vs. 201 ms)、心房連続刺激による最大AF持続時間は長い傾向を呈している(7 秒, 19秒 vs. 6秒)。各種バイオマーカーは、MeS-AF群は、AF群、対照群に比較し、インスリン濃度、Dダイマーが高値の傾向がある。現在、この4頭における左房の免疫組織学的検討を行っている段階である。現時点では統計学的処理はできないが、MeS-AF群、AF群ではAFを発症させる電気生理学的基質を有していると考えられる。 臨床研究:メタボリック症候群を合併したAF患者20例、非合併AF患者20例のAFに対するカテーテルアブレーションは終了している。各種バイオマーカー、術中の三次元マッピング画像の解析を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験では、pilot研究として4頭現在終了している。高カロリー食の給餌後に高頻度ペーシングによる心房細動(AF)モデルの作製が課題であったが、その手技は確立した。現在、追加で11頭購入しており高カロリー群の給餌を行っている。平成28年にこれら6~7 頭の実験を行う予定である。平成28年末から平成29年初旬に残りの5~4頭を実験終了する予定である。高カロリー食を給餌し、高頻度ペースメーカー刺激を行うMeS-AF群、通常食に高頻度ペースメーカー刺激を行うAF群が対照群より、心房及び肺静脈の不応期が短く、AFの持続期間が長い傾向にあった。これらは予想された結果であるが、MeS-AF群、AF群の相違は得られていない。今後の免疫組織学的評価、各種バイオマーカーの評価を待つ必要がある。 臨床研究では、メタボリック症候群合併および非合併AF症例の収集は概ね終了した。平成28年度に追加の症例を集積し、各種解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画には含まれていなかったが、組織学的検討では心房筋のみならず心房周囲の自律神経の染色も行っている。さらに、犬における凝固線溶系マーカーのタンパク分析も行う予定である。現在はPilot研究としての4頭が終了し、実験手技は確立されたと考えている。今後実験計画推進のため、残りの動物実験を計画的に行い、免疫組織学的評価を合わせて推進する必要がある。 臨床研究では、統計的な処理を行うために症例を追加する必要がある。三次元マッピングの解析、凝固線溶系マーカーなどの各種のデータ解析をさらに進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
Pilot研究で使用したビーグル犬4頭およびその備品の合計額が予定より少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年次の残りの動物実験用の犬の購入と各種組織染色や採血項目のための消耗品として使用する。
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