研究課題
申請者はこの20年間、心不全の根本的治療法開発のため心筋細胞肥大における核内情報伝達機構の解明を精力的に行ってきた。そして、ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を持つ転写調節因子p300がGATA4因子をアセチル化し(Mol Cell Biol 2003)、心筋梗塞後のリモデリング増悪させることを明らかにした(Circulation 2006)。さらに、天然物ウコンの主成分でp300のHAT活性を特異的に抑制するクルクミンが、心筋GATA4のアセチル化を抑制することにより心不全の増悪を抑制することを、高血圧心疾患及び梗塞後心不全の2つの動物モデルで確認した(J Clin Invest 2008)。こうして心筋細胞核の過剰なアセチル化が病的心筋細胞肥大から心不全発症に重要であることが国際的に認識されてきた(Circ J 2010)。心筋核内においてp300/GATA4は巨大なコンプレックスを形成していると推測されるが、このコンプレックスは心不全シグナルによって、時間的、空間的に変化し、さまざまなクロマチン修飾因子がリクルートされることにより転写の活性・不活化を制御していると考えられる。これまで静岡県立大学 森本達也教授と協力し、成体不全心におけるp300複合体を解析し、病態プロテオミクスによるp300結合タンパク質の機能解析を行い、新規p300結合分子として、アルギニンメチル化酵素PRMT5とその活性制御因子であるMEP50を同定した。本申請研究で、PRMT5/MEP50複合体を介する心肥大転写反応における分子機構解析と分子標的治療への応用研究を進めた。また、クルクミンをリード化合物とした創薬を目指し、クルクミン誘導体・類縁化合物の心不全治療薬としての効果を検証、新規化合物であるY030がクルクミンの約10分の一の低濃度にて心筋細胞肥大を抑制することを見出した。
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Circ Res.
巻: Mar3;120(5) ページ: 835-847
10.1161/CIRCRESAHA.116.309528. Epub 2016 Dec 5.