拡張期心不全患者における病理組織学的評価 当院で心筋生検を実施した症例を抽出、EFを50%以上、年齢50歳以上をカットオフクライテリアとし症例を抽出した。CD31の免疫染色に加えマクロファージ関連の免疫染色(CD68)や低酸素誘導刺激因子:(HIF-1α)の免疫染色を追加して行った。HIF-1αなどについては良好な免疫染色結果を得たため、次に病理解析システム(Definiens Tissue Studio)を導入して解析を進めた。平成29年度内に本システムによる画像解析を完了し、現在統計学的な解析を実施している。 心不全患者のバイオマーカ:急性心不全患者の血液検査を実施し、計画書に述べられたBNP代謝系の異常について検討を行った。BNP前駆体の測定系を確立し得たことから総BNP全体に占めるBNP前駆体の割合、つまりBNPのプロセシングの程度が算出可能となった。このBNPの代謝の程度が拡張期心不全患者と収縮性の低下した心不全患者では差異がある可能性が示唆される結果が得られ、学会報告を行った。また収縮性の指標である左室駆出率とBNP前駆体の総BNPに占める割合について有意な関連性を認めInternational Journal of Cardiology誌に平成30年に論文報告を行った。 拡張期心不全動物実験モデル:急性期実験の結果、最適なマイクロスフェアの冠動脈投与量を確定した。マイクロスフェアの投与によりEnd-diastolic pressure volume regression: EDPVR)の右上方へのシフトを確認し得た。しかし急性期のマイクロスフェアの投与効果は一定ではなく、慢性期の実験系の確立にはなお検討を要する。心内膜下の虚血負荷のみでは拡張機能に与える影響が不十分である可能性もあり、今後アンジオテンシン負荷なども加味し慢性期の実験系確立をさらに目指す予定である。
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