研究課題/領域番号 |
15K09113
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
稲垣 正司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80359273)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床心臓学 / 迷走神経 / 心筋梗塞 / 心不全 / 不整脈 |
研究実績の概要 |
平成27年度に確立したウサギの虚血再灌流モデルを用いて、①心筋梗塞再灌流治療後の短期間迷走神経刺激による初期リモデリング抑制効果および不整脈抑制効果の検討、②心筋梗塞再灌流治療後の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後の炎症反応やその後の治癒過程(線維化等)に及ぼす影響の検討を行った。 ウサギ(n=20)の右頸部迷走神経に神経刺激用電極を植え込んだ。2週間後に、左室側壁弁輪部にナイロン糸をかけて冠動脈左室枝・回旋枝を閉塞し、30分後に再灌流を行った。迷走神経刺激治療群(V群)と非治療群(C群)に無作為に振り分けて治療を行った。 心筋梗塞後3日間の心室性期外収縮の発生数は、V群とC群に有意差を認めなかった。心筋梗塞14日後、冠動脈造影を行い閉塞冠動脈を確認した。心臓超音波検査では、V群で左室腔の有意な縮小(C群:5.4±1.2ml、V群:4.0±0.9ml、p<0.01)と心収縮率の改善傾向(C群:53.3±8.8%、V群:60.5±7.5%)が認められた。血行動態検査ではV群で改善する傾向がみられた(C群vsV群、LVEDP:7.5±3.4 vs 4.7±2.4mmHg, max dLVP/dt:6318±1026 vs 6439±528 mmHg/s, Tau:16.1±30.0 vs 13.6±3.6 ms)。梗塞サイズの評価では、梗塞領域/リスク領域(C群:42.2±11.3%、V群:27.4±8.4%、p<0.01)、梗塞領域/左室領域(C群:22.7±8.8%、V群:12.6±7.4%、p<0.05)はV群で有意に小さかった。非梗塞部(中隔)の線維化に有意差は認められなかった。 平成29年度に予定している大動物の虚血再灌流モデルを用いた経皮経血管的迷走神経刺激の治療効果の検討にむけて、イヌの虚血再灌流モデルの基礎的検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予期せずに、これまでに報告されてきた研究結果を再現できなかったため、平成27年度に実験モデル(ウサギの虚血再灌流モデル)について基礎的検討を行う必要が生じた。その結果、これまでに広く報告されているウサギの回旋枝結紮による心筋梗塞モデルでは梗塞サイズのばらつきが非常に大きく、梗塞サイズ縮小を効果とする治療法の検討には適さないことが明らかとなった。このため、平成27年度に均一な梗塞サイズを作成できる実験モデルの確立を行った。これに伴い、本年度は、平成27年度から平成28年度前半に予定していた実験を実施し、H28年度に実施予定であった【迷走神経刺激が心筋梗塞後の電気生理学的性質に及ぼす影響の検討】は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度に実施予定であった【迷走神経刺激が心筋梗塞後の電気生理学的性質に及ぼす影響の検討】は実施せず、平成29年度には、当初の計画に従って、大動物の虚血再灌流モデルにおいて経皮経血管的迷走神経刺激法を用いて再灌流後に短期間迷走神経刺激を行い、その治療効果(初期リモデリング抑制効果・不整脈抑制効果)を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の一部研究内容を当初の計画より変更したため、購入が不要となった試薬(光学的活動電位マッピングに使用する蛍光色素)が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にはイヌを使用した実験を予定しているため、動物の購入費用が高額となる。次年度使用額を用いてイヌの実験数を追加することを予定している。
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