研究課題
最終年度は、心筋梗塞急性期に臨床で想定されるシナリオに即して、開発した経皮経血管的迷走神経刺激装置を用いて虚血再灌流後に短期間迷走神経刺激を行い、治療効果を検討した。イヌの左冠動脈前下行枝を結紮し360分後に再灌流を行った。迷走神経刺激治療群(V群)とコントロール群(C群)に無作為に振り分け、V群では再灌流30分後から経皮経血管的に3日間の迷走神経刺激を行った。刺激強度は平均心拍数を10~20%低下させるように設定した。虚血開始前、再灌流3時間後、虚血再灌流2週間後の血行動態(左心室圧、心拍出量、肺動脈楔入圧等)は両群間に有意差を認めず、迷走神経刺激中に血行動態の悪化は見られなかった。再灌流後3日間の心室性期外収縮の発生に両群間で有意差を認めなかった。再灌流後3日まで経時的に計測した血清トロポニンIの時間積分値は、C群に比しV群で有意に低かった。虚血再灌流2週間後に心臓を摘出し、虚血リスク領域および梗塞領域を計測した。梗塞領域/リスク領域はC群に比してV群で有意に小さかった(43.9±12.1%vs27.3±13.5%、p=0.021)。本研究では、急性心筋梗塞に対する新しい治療法として、再灌流治療後の短期的迷走神経刺激による初期リモデリングおよび不整脈抑制治療を確立することを目的とし、ウサギおよびイヌの虚血再灌流モデルを用いて、短期的迷走神経刺激の治療効果を検討した。ウサギでは冠動脈の走行が個体間で大きく異なることが原因となり、イヌでは側副血行路の発達が個体間で大きく差があることが原因となり、病態モデルの虚血領域・梗塞サイズに個体間で大きなバラツキが生じる。本研究では、虚血開始前・再灌流時に冠動脈造影を行い側副血行路を結紮することにより、均質な虚血再灌流モデルを作成した。ウサギおよびイヌの両動物種において、虚血再灌流後の3日間の迷走神経刺激が心筋梗塞サイズを縮小した。
すべて 2018 2017
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