研究課題/領域番号 |
15K09119
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
川崎 雅規 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (50214630)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血管内超音波 / 力学的ストレス / スペックル・トラッキング・エコー技術 |
研究実績の概要 |
近年、超音波画像の時間的に連続する2つのフレーム間で構成要素の動きを追随し各フレーム間で繰り返していけば、時間とともに変化する局所の組織の位置を追跡することが可能となるスペックル・トラッキング・エコー技術が開発され、心機能評価に応用されてきた。我々は最近、スペックル・トラッキング・エコーを用いた左心房の時間-容量曲線の解析により肺動脈楔入圧をE/e’よりも正確に予測できる(r=0.92) Kinetics-Tracking index (カイネティクス・トラッキング・インデックス:KT index)を開発しその成果を報告してきた。このようにスペックル・トラッキング技術は時間-容量曲線解析を可能としてきた。 一方、急性心筋梗塞の主な原因である冠動脈プラークの破裂はプラークの組織性状のみならずプラークに対する力学的ストレスに影響を受けるがintegrated backscatter (IB)-血管内超音波では冠動脈プラークの組織性状は診断できるが力学的ストレスは評価できない。そこで血管内超音波にスペックル・トラッキング・エコー技術を応用すれば心周期に伴うストレスによるプラークの偏位を評価することができると考えた。 開発の結果、冠動脈の心周期における力学的ストレスを定量化して表示する方法が確立できた。方法の正確性・信頼性の検証のためにマニュアルで求めた心周期に伴う血管面積、内腔面積の変化をスペックル・トラッキング血管内超音波で求めた値と比較した。またスペックル・トラッキング血管内超音波で求めたプラークのストレインを解析した。その結果、スペックル・トラッキング血管内超音波で求めた心周期に伴う血管面積、内腔面積はマニュアルで求めた値と相関し(r=0.99, r=0.98, p<0.001), ストレインは冠動脈の動脈硬化病変のいわゆる肩の部位で最大である場合が最多であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性冠症候群以外で左冠動脈前下行枝に経皮的冠動脈形成術を施行した患者で石灰化病変を除く中枢側のプラーク104病変を解析し、マニュアルで求めた心周期に伴う血管面積、内腔面積の変化をスペックル・トラッキング血管内超音波で求めた値と比較した。またST-IVUSで求めたプラークのストレインを解析した。その結果、スペックル・トラッキング血管内超音波で求めた心周期に伴う血管面積、内腔面積はマニュアルで求めた値と相関し(r=0.99, r=0.98, p<0.001), ストレインはいわゆる冠動脈の動脈硬化病変のいわゆる肩の部位で最大である場合が最多であった。
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今後の研究の推進方策 |
我々はプラークの偏位を動画解析するスペックル・トラッキング血管内超音波を開発した。IB-IVUSで脂質コアの広がりや線維性被膜の厚みを評価し、スペックル・トラッキング血管内超音波で力学的ストレスを評価すれば、冠動脈プラークの不安定性を多因子で評価できる可能性が示唆された。今後、組織性状と力学的ストレスの双方からプラークの不安定性を診断する装置の実用化に迫りたい。
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