【背景】最近、時間的に連続する2つのフレーム間での超音波画像の構成要素の動きを追随し、各フレーム間で繰り返していけば、時間とともに変化する局所の組織の位置を追跡することが可能となるスペックル・トラッキング・エコー技術が開発された。スペックル・トラッキング技術はこれまで、左心室の動きを自動的にトラッキングすることにより、左心室機能の評価に応用されていた。そこで、スペッキング・トラッキング技術を冠動脈超音波に応用する技術を開発すれば、冠動脈の瞬間的な位置の変化、すなわちプラークに加わる力学的ストレスの評価が可能となり、プラークの組織性状診断と組み合わせれば、急性冠症候群の発症の予測と予防に向けた取り組みが革新的に前進すると考えた。 【結果】スペックル・トラッキング技術を冠動脈超音波画像でも施行可能とするシステムを開発し、冠動脈の心周期における力学的ストレス(辺縁の動きの量や速度、ストレイン)を定量化して表示する方法が確立できた。このシステムを用いて動脈硬化危険因子(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙)の有無により各パラメーターを比較したところ、糖尿病の重症度の指標であるHbA1cと関連があることが判明した。また、冠動脈の壁の成分(脂質、線維質)と各パラメーターの間には関連性はなく、冠動脈の安定性(心筋梗塞が発症するか否か)を評価するには壁の成分のみでなく、力学的ストレスの評価が必要であることも明らかになった。
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